著者
矢野 孝雄 小坂 共栄 緑 鉄洋 河野 重範
出版者
市立大町山岳博物館
雑誌
市立大町山岳博物館研究紀要 (ISSN:24239305)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.47-68, 2020 (Released:2020-09-01)

北部フォッサマグナ南部域において上部新生界の層序・堆積年代を整理し、水内帯中央部の別所層~柵層産底生有孔虫化石および大町市美麻竹ノ川産大型動物化石に関する新たなデータを加えて、後期新生代の古環境変遷を考察した。分析された底生有孔虫群集は一般に中部漸深海帯下部~上部漸深海帯を示し、柵層中部・上部では急速に浅海群集に変化する。竹ノ川産大型動物化石は中新世型要素を含む大桑・万願寺動物群で、浅海内湾の平行群集を構成する。北部フォッサマグナ南部域における古環境変遷はユースタシーに規制されていて、さらに、それに重なるテクトニックな昇降運動が前期中新世末の急速沈降、中新世末期~前期更新世の浅海化、中期更新世前半の急速隆起をひきおこし、古環境に長期的で根本的な変化をもたらした。北部フォッサマグナ南部域におけるテクトニクスにかかわるもっとも重要な課題は、①前/中期中新世のグリーンタフ変動第1次火成活動と漸深海堆積盆の発生、ならびに②中期更新世前半における急速な山地隆起、のメカニズムと要因である。