著者
土谷 茂久 河野 龍太郎
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

原子力発電のパブリックアクセプタンス問題を取り上げて,次のように所期の成果をあげることができた.1.コミュニケーションにおけるゲーミング・シミュレーションの有効性を検証(1)集団的意思決定支援システムの開発と有効性の検証原子力発電所運転クルーの中央制御室での行動を分析して,集団的意思決定支援システムと分析手法を開発.柏崎および福島の運転員訓練センターの教官に実施して有効性を確認した.(2)合意形成支援(開放性)システムの開発とその有効性の検証合意形成を阻害する大きな要因のひとつである「開放性」について学習に心を開かせるためのゲーミング・シミュレーションを開発した.有効性が確認されて2002年4月からT電力原子力発電所の運転員訓練に採用される.2.原子力発電所を取り巻く環境のシステム分析を行ってモデルを作成し問題の全容を解明T電力K発電所のインタビューやアンケート結果を分析した結果,電力会社側と地元住民との意識のずれが地域共生を妨げる大きな要因であることが明らかになった.これまでの会社側の「広報活動」が科学的根拠に基づく説得を中心にしているのに対して,地域住民は不信感や不満といった感性的側面を問題にしている.3.このモデルに基づき,ゲーミング・シミュレーションを用いた原子力発電に関する合意形成支援システムのプロトタイプを作成し,実施問題の大半は会社側にあり,社員およびその家族全員一人一人が地域住民と個人レベルで相互理解を深める以外に根本的な解決策がないところから,この点を社員とその家族に疑似体験を通じて学習させるシステムのプロトタイプを作成しT電力原子力研究所でテストランを行った.明年度,T電力およびN原子力発電でテストランを行う予定である.