著者
河野辺 貴則
出版者
日本教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:1344946X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-16, 2020-09-30 (Released:2021-01-12)
参考文献数
20

本研究の目的は,道徳教科書における人権課題に関わる教材の掲載傾向を検討することを通して,人権教育と道徳教育の関連性を考察していくことにある.調査対象とする資料は,小学校と中学校の道徳教科書(72 冊)としている.調査結果として,道徳教科書には人権課題に関連している教材が数多く掲載されていることを確認した.人権教育と道徳教育は,それぞれが別の世界に位置づいているかのような認識を乗り越えて,児童生徒に人権課題について向き合う機会を提供し,人権課題の解消を前に進めていることに寄与している.本稿による分析結果から,道徳教科書には人権課題に対する理解や問題の解消に向けた取組として寄与しており,人権教育と道徳教育は統合的な関係へ向かっている傾向にあることが考察できる.一方で,相補的な関連性といえる部分もあることから,人権教育と道徳教育の関連性を意識しながら,計画的に教育活動を推進していくことが肝要であり,両者の関連性は益々密になっていくことだろう.