著者
曽良 一郎 沼地 陽太郎
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

コカイン報酬効果の検討では、いずれかのモノアミントランスポーターが欠損しても他のトランスポーターが補う可能性が示唆され、脳内微少透析法による検討では、ドーパミントランスポーター(DAT)欠損マウスにおいてコカイン投与により線条体の細胞外ドーパミン(DA)が上昇したが、DAT欠損マウスにセロトニントランスポーター(SERT)欠損が加わったDAT/SERTダブルKOマウスでは、その上昇が観察されなかったことから、SERTがDA再取り込みを補完したと考えられた。この対応しないモノアミントランスポーターによるモノアミンの取り込みをin vivoで確認するため、SERT欠損マウスを用いて、免疫組織化学染色法によりDAニューロンへのセロトニン(5-HT)取り込みがみられるか検討した結果、DAT,5-HTの二重染色により、特定の脳部位でDAニューロンに5-HTが取り込まれていることが確認された。モノアミントランスポーター欠損マウスを用いて、選択的5-HT取り込み阻害剤(SSRI)投与時の前頭前野皮質(PFc)、線条体(CPu)におけるモノアミン動態を脳内微小透析法により測定し、モノアミントランスポーターの代償機構を検討した。フルオキセチン投与時、DAT/SERTダブル欠損マウスにおいて、PFcの細胞外DA,ノルエピネフリン(NE)が上昇したことから、Fluoxetineがノルエピネフリントランスポーター(NET)に作用した可能性と、同部位でのDA制御へのNETの関与が示唆された。CPuではDA上昇は認められず、前頭前野皮質のモノアミン神経伝達は線条体とは異なったメカニズムにより情動機能を制御していると考えられた。以上、異種同属トランスポーターによるモノアミンの代償的取り込み機構の存在を支持する結果が得られた。