著者
酒々井 眞澄 沼野 琢旬 深町 勝巳 二口 充 津田 洋幸
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.O-25, 2014 (Released:2014-08-26)

多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のラット肺内投与に伴う長期経過後の中皮腫発がんに関わるエビデンスはない。本研究ではラットにMWCNTを経気管的肺内スプレー法により投与する実験システムを用いて2年経過での中皮腫発がんを検証した。雄F344ラット(5群を設定、各群15匹)にMWCNT(FT分画平均長2.6 µm、W分画平均長4.2 µm、R分画平均長>2.6 µm)を 2週間で計8回(total amount 1.0 mg)を肺内スプレーし96週目までの間に死亡あるいは瀕死解剖された個体および109週目に剖検された個体について中皮腫発生を調べた。65週目に1個体に縦隔原発の中皮腫が発生し、以降剖検までに11個体に中皮腫が発生した。計12個体中10個体が縦隔あるいは心外膜原発であり、2個体が精巣tunica vaginalis原発と考えられた。胸腔での中皮腫発がんまでの平均経過は94週であった。無処置群およびvehicle control群には腫瘍は認めなかった。腫瘍および各臓器の組織学的検索の結果、気管内にスプレーされたMWCNTは上縦隔リンパ節、中皮腫組織、肥厚した横隔膜中皮などに存在した。少なくとも本実験条件下では、CNTが気管あるいは肺内から胸腔に移動し、胸膜や縦隔中皮を標的に中皮腫発がんに至ったと考えられる。