- 著者
-
泉 安彦
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 若手研究(スタートアップ)
- 巻号頁・発行日
- 2008
1. 神経幹細胞賦活作用の評価系の構築中脳初代培養細胞を用いた神経幹細胞賦活作用の評価系の構築を目的とした。中脳初代培養細胞に神経幹細胞が存在することは確認できたが、神経幹細胞からドパミンニューロンへの分化は起こっていなかった。GABAAアンタゴニストであるビククルンおよびピクロトキンの処置により神経系細胞のうち成熟神経細胞の割合が上昇し、ドパミンニューロン数が増加した。このことから、GABAAアンタゴニストは中脳初代培養細胞において神経前駆細胞からニューロンへの成熟過程を促進することが示唆された。また神経系細胞のうち成熟神経細胞の割合を算出する方法は神経分化成熟過程を評価できることが分かった。2. 神経投射再生作用の評価系の構築黒質-線条体神経投射をin vitroで再構築し、評価系として有用であるか検証した。シリコン製隔離壁を用い領域内に中脳細胞を播種し、領域外へ進展した成長円錐の距離を測定する。この方法では、主に軸索を評価できていることが分かった。プロテインキナーゼ阻害薬スタウロスポリンおよび神経栄養因子GDNFがドパミンニューロンの突起伸長を促進することを確認し、さらに、薬剤処置による突起伸長様式の違いが観察された。また、前述のシリコン製隔離壁外に線条体細胞を播種したところ、線条体細胞に向けてドパミン神経突起が伸長することを明らかとした。したがって、本評価系は黒質から線条体へのドパミン神経投射をin vitroで反映しており有用なものであることが分かった。