- 著者
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橋本 佳奈
山村 省吾
冨田 裕之
泉 有希子
川村 洋介
野々垣 比路史
- 出版者
- 近畿産科婦人科学会
- 雑誌
- 産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.1, pp.95-99, 2013
新生児における頭蓋骨陥没骨折の発生はまれであるが,その大部分は妊娠・分娩中の外傷に起因し,外傷既往のない先天性頭蓋骨陥没骨折の発生は4000~10,000分娩と極めてまれである.今回われわれは,受傷機転の明らかでない妊娠および分娩経過を経て出生した児に,右前頭骨陥没骨折を認めた1症例を経験した.26歳,1経産,身長149cmと低身長であるが狭骨盤や扁平仙骨は認めない.妊娠中の外傷既往はなく,妊娠39週5日に自然陣痛発来し,11時間31分の分娩時間を経て自然経腟分娩に至った.吸引・鉗子分娩やクリステレル圧出は行っていない.新生児は2640gの女児,Apgar scoreは1分値9点/5分値10点であった.出生時,右前頭部に3×4.5cm大の陥没を認め,頭部単純X線,CTを施行した.右冠状縫合に沿って右前頭骨の陥没を認めたが,頭蓋内病変は伴わず,明らかな神経学的症状も認めなかった.入院中,頭蓋内圧上昇や神経学的症状は出現せず.退院後も数週間の経過観察を行ったが,陥没骨折の改善傾向を認めなかったため,日齢28に頭蓋形成術を施行し,術後経過は良好である.非外傷性の新生児頭蓋骨陥没骨折の要因は,母体因子として子宮筋腫,子宮奇形,狭骨盤,および正常骨盤における第5腰椎,岬角,坐骨棘など,胎児因子として患児自身や多胎における他児の身体による圧迫などが挙げられる.しかし,出生前に頭蓋骨陥没骨折を予測,診断することは困難で,出生時に初めて診断されることがほとんどである.頭蓋内病変や神経学的合併症の多い外傷性陥没骨折と異なり,非外傷性の場合は出生時に合併症を伴わないことが多く,また自然治癒例もあり,その長期的予後は良好である.よって出生時に合併症を認めない非外傷性陥没骨折においては,まず経過観察を選択し,その間に外科的介入の必要性や時期,手法を検討することが可能であると考える.〔産婦の進歩65(1):95-99,2013(平成25年2月)〕