著者
泉 泰治
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.64-69, 2002-09-17
被引用文献数
1

生命保険の医学的選択の中心となるのは被保険者個人の健康状態であるが,こういった個人情報の取扱いについても国のレベルでの法規制が避けられないものとなりつつある。日本の個人情報保護法案では利用目的の特定義務,本人への開示義務,訂正要求への対応義務などが示されている。これら義務規程の生命保険業への影響を,アメリカですでに行われている法規制(NAICプライバシーモデル法)との関連で考察した。また,これらの法規制の存在下で,米国において生命保険会社間の顧客医療情報交換制度(MIB)が成立している基盤についても論考した。その中で,近年日本において,プライバシー法制化や販売チャネルの変化など生命保険の周辺事象は米国型になりつつあるが,それに対応できるだけの選択制度の整備ができていない状態が顕在化しつつあることが示された。この乖離は死差益にとって大きなリスクになりうるものと考えられる。