著者
泉 英二
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.11-18, 1998-10-01
被引用文献数
1

日本の戦後システムが大転換期を迎える中で,林政も大きく転換しようとしている。その中でも注目されるのが,森林法等の改正案で浮上してきた「市町村の役割強化」の考え方である。そこで,まずこのような考え方が登場してきた背景について,多面的に検討した。続いて,戦後市町村林政の展開過程を諸文献をもとに検討し,その上で当時の課題を紙野に依拠して明らかにした。次に,愛媛県における市町村の林務執行体制を検討し,現状の林政への対応で精一杯であることを明らかにした。続いて,愛媛県庁の林務執行体制と予算等の現状を検討した。次に,国の「行政改革」の内容を官民役割分担,地方分権等を中心に検討し,その上で,最近の「林政改革」の内容を明らかし,市町村への権限委讓とすると,かなりドラスティックであると評価した。しかも,現状の市町村の体制では具体化は無理とした。最後に,今後の市町村林政への期待として,人員・組織の強化を前提として,(1)市町村独自の「林業振興計画」の策定,(2)市町村による管内森林・林地の公有化と公的管理の強化,(3)市町村合併による「流域林業」政策の実現,等を述べた。