著者
遠藤 克浩 湯原 大輔 泰岡 顕治
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.39-44, 2019-01-31 (Released:2020-01-31)
参考文献数
11

分子動力学シミュレーションは分子のふるまいを調べるための汎用的で強力な手法であるが,目的によっては巨大な系で長時間のシミュレーションを実行する必要があり,その計算コストは途方もないほど大きくなる場合がある.この計算コストの問題を解決するために,並列コンピュータを用いて計算を並列化することで計算に要する実時間を減らすことが実現されている.本稿では,並列に計算される短時間のシミュレーション結果から,機械学習によって長時間シミュレーションの結果を予測し,長時間シミュレーションを高速化する「MD-GAN」について紹介する.
著者
泰岡 顕治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

17年度,18年度に引き続き液晶の粗子化分子動力学シミュレーションおよび原始レベルでの分子動力学シミュレーションを行った.粗子化分子動力学シミュレーションについては,平板間に挟まれた液晶の振る舞い,拡散係数などについてシステムサイズ依存性について大規模計算を行った.また,粗子化シミュレーションとの対応を見るために,昨年度からの続きで原始レベルでの分子動力学シミュレーションを行った.特に今年度は,5CBを用いて,当方相と液晶相の間の相転移現象について計算を行った.既存の研究では,分子数が少なく,また長時間シミュレーションが行われていなかったため,粗子化シミュレーションとの比較も難しかった.本研究では,分子動力学専用計算機MDGPAPE-3を用い,500分子程度の系において, 0. lMPaにおける様々な温度で,約100nsほどのシミュレーションを行い,相転移現象を計算した.計算に汎用機を用いた場合には数十年かかることが予想されるが,本研究ではMDGRAPE-3を用いることで1年弱で計算を行うことができた.分子モデルとしてOPLS-UAモデルを用いたが,計算系を大きくし,計算時間を長く取ったことで,周期境界条件の影響が少なくなり,相転移の際のヒステリシスが小さくなったことで,転移点をより正確に見積もることが可能となった.転移点は実験結果より3%ほど小さくなった.また粗子化シミュレーションで得られた値とほぼ一致した.