著者
望月 慎吾 津丸 真一 山田 和紀 望月 高明 伴 敏彦
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.276-279, 2012-09-15 (Released:2012-10-26)
参考文献数
11

穿通性の心損傷を来たした場合,心嚢水の貯留を認めたり,血行動態の不安定となる症例が多い.心臓に釘が4本穿通していたにもかかわらず,心嚢水の貯留が極少量で,血行動態の安定していた症例を経験したので報告する.症例は22歳,男性.釘うち機で受傷し,近医を受診した.胸部レントゲン写真およびCT検査で,5本の釘の穿通による心臓および肺の損傷を疑い,手術目的で当科紹介となった.CT検査では気胸を認めたが,心タンポナーデは認めなかった.左開胸,分離片肺換気とし,心膜を切開すると釘が3本左心室の側壁に刺入していた.1本は心筋内を通過することなく直接肺に穿通していた.残り1本は,経食道心エコー上で心内に埋もれているのを確認した.いずれの釘も人工心肺を使用することなく,抜去することができた.術後経過は良好で,術後12病日に独歩退院となった.