著者
峯松 信明 津田 圭一 広瀬 啓吉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.726, pp.9-16, 2001-03-23
被引用文献数
3

周知のように,従来の音声情報処理においては「音声の生成過程では,韻律的特徴と分節的特徴は独立して制御される」との仮定の下でその処理体系が構築されてきた。しかし昨今の研究例に目を向けると,音声医学,音声科学,音声工学の分野において,F_0とスペクトルの依存性を仮定した方法論の有効性が報告されている。音声の分析に焦点を絞った場合,F_0とスペクトルの依存性は,フォルマント周波数をベースとした分析例が多い。しかし,音声工学の立場からは,フォルマント周波数によるスペクトル記述は必ずしも得策とは言えない。筆者らの一部は,既に日本語音声を対象としてF_0変化に起因するケプストラム係数変動を定量的に分析し,そのモデル化を行っている。本研究では,この分析方式をまず有声子音音声に拡張する。更に,無声子音についても前後の有声区間から求まる補間F_0との依存関係について分析する。その結果,有声子音においても母音同様のF_0依存性が観測された他,無声子音の一部においては,有声子音と同等のF_0依存性が観測された。本研究ではこれらの分析に基づいてケプストラム係数の変動予測モデルの構築を試み,更に,予測モデルの工学的利用について予備検討を行なったので報告する。