- 著者
-
津田 敏彦
今田 和則
水口 清
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.132, no.1, pp.55-63, 2008 (Released:2008-07-14)
- 参考文献数
- 54
- 被引用文献数
-
2
イミキモド・クリーム剤(販売名:ベセルナクリーム5 %)は,米国の3M Companyで開発された外用剤で,本邦初の尖圭コンジローマ治療薬である.イミキモドは,細菌やウイルスの構成成分を認識し免疫応答を賦活化するトール様受容体(TLR)のひとつであるTLR7に対してアゴニスト活性を示す.イミキモドは,直接的にはウイルスの増殖抑制作用を示さないが,単球あるいは樹状細胞に発現するTLR7に作用してIFN-α,TNF-αおよびIL-12などのサイトカイン産生を促進し,主としてIFN-αの作用によりウイルスの増殖を抑制する.また,イミキモドにより産生が促進されるIFN-α,TNF-αおよびIL-12などのサイトカインはT細胞を活性化し,活性化T細胞から産生されるIFN-γなどのサイトカインを介して細胞性免疫応答を賦活化する.尖圭コンジローマ患者を対象とした臨床薬理試験において,イミキモド5 %クリームの塗布により疣贅部位のヒトパピローマウイルス-DNA量の減少,IFN-α,TNF-α,IFN-γおよびIL-12のp40サブユニットの各mRNA量の増加が認められた.以上から,イミキモド5 %クリームは塗布部位において各種サイトカインの産生を促進し,ウイルス増殖の抑制および細胞性免疫応答の賦活化によるウイルス感染細胞傷害作用により,疣贅を消失させると考えられる.国内および海外で実施された尖圭コンジローマ患者を対象とした臨床試験において,イミキモド5 %クリームの1日1回,週3日,最大16週間塗布により疣贅の消失あるいは縮小が認められた.本邦では,これまで尖圭コンジローマの治療には外科的療法が用いられてきたが,イミキモド・クリーム剤は外科的療法と比較して侵襲が少なく,有用な治療薬として期待される.