著者
脇 昌子 洪 秀樹 南部 征喜
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.91-96, 1989-02-28 (Released:2011-08-10)
参考文献数
11

インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) 79例の早朝空腹時血清3, 5, 3'-triiodothyronine値 (T3) を, 糖質200~300g/日の入院食摂取下に測定, 諸因子との関係を検討した. さらに65例では, T3と食事療法の効果との関係をretrospectiveに検討した. その結果T3は, 罹病歴 (年), 空腹時血糖, HbA1cとは有意な負の相関を, 肥満度 (BMI), NEFA, T4, 1日尿Cペプチド量とは有意な正の相関を認めた. 一方, 食事療法のみで良好な血糖コントロールを得た29例 (D群) のうち26例 (90%) にT3 110ng/dl以上であり, またコントロールに薬物の併用を要した36例 (D+M群) の内23例 (64%) はT3 110ng/dl未満で, 両群の食事療法開始前のT3分布に有意な差を認めた (χ2=17.0, p<0.001).すなわち, T3はNIDDMの病態を包括的に反映しており, その測定により食事療法の有効性と限界の予測が可能と考えられた.