著者
浄土 智 久田 諒
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.459-466, 2013 (Released:2013-12-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

巨細胞性動脈炎(以下,giant cell arteritis : GCA)は50歳以上の高齢者に発症する肉芽腫性動脈炎で,側頭動脈がしばしば障害されることから以前は,側頭動脈炎(temporal arteritis)と呼ばれていた.しかしながら実際には側頭動脈以外の動脈,特に,頸動脈とその分枝,大動脈とその分枝に炎症がみられることより,近年は,その病理所見からGCAという呼称が一般的になっている.本総説の前半では,GCAの臨床病像を包括的に紹介した.一方,GCAの罹患動脈は小,中,大動脈にわたり,障害される動脈の部位もさまざまである.それゆえ,GCAは古典的な臨床像を呈するものの他に,様々な亜型も存在することが知られてきている.最近,我々は,失明以外には,他の臨床症状,陽性検査所見を欠いていたOccult GCA一例と,発熱のみを臨床症状とし,画像検査で大動脈とその分枝の壁肥厚が検出され,浅側頭動脈生検で組織学的に診断されたSilent GCAの一例を経験した.本総説の後半でこの自験例二例も紹介し,GCAの臨床像の多様性についても考案する.