著者
浅田 昌宏
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.p996-1004, 1981-07
被引用文献数
1

超音波検査を中心として, すべての胎児を妊娠初期から分娩に至るまで, 経時的に監視する流れをシステム化し, この流れに従つて, 下記の如く, 実時間超音波断層法による胎児の発育診断を行つた.1)妊娠初期においては, 羊水腔径や胎児坐高長の計測を打つだ.BBT起算による妊娠日数と羊水腔径との相関係数は0.914であり, 胎児坐高長との相関係数は0.990であつた.また, 妊娠日数の推定の誤差範囲は, それぞれ, ±5日, ±3日であり, 胎児の直接的計測値である坐高長の方が, 間接的計測値である羊水陸径より優れた胎児発育診断のパラメータであることが知られた.2)BBT起算による坐高長発育曲線を利用して, 最終月経起算による坐高長値をブロつトすると, 妊娠日数の推定が1週間以上ずれる症例が7.1%みられた.3)妊娠中期以降は児頭大横径や胎児腹囲の計測を行つたが, これら単独計測では, 正常月経周期を有し, 最終月経が明確な妊娠においても, 正常胎児発育群から, 発育異常群を明確に除外診断しがたく, 児頭大横径によるSFDの正診率は54.3%であり, 胎児腹囲による場合は63.7%であつた.しかし, 胎児腹囲によるLFDの正診率は81.3%であつた.4)児頭大横径と胎児腹囲を同時測定後, 1週間以内に出生した73例の未熟児分娩の判別式は, Z=0.6012X+3, 100Y-45.204となり, 正診率は, 90.4%, 偽陽性率は38.5%, 偽陰性率は3.6%であつた.10例のIUGRのうち9例が出生前に診断された.5)児頭大横径, 胎児腹囲, 超音波検査時点での妊娠日数と子宮底長の4項目による多変量解析から胎児体重推定値を求め出生体重との相関を求めるとR=0.852で, 1S.D.=±281gであつた.