- 著者
-
浅野 凜子
三上 修
- 出版者
- 日本鳥学会
- 雑誌
- 日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.2, pp.145-152, 2022-10-24 (Released:2022-10-31)
- 参考文献数
- 25
米英に比べ,日本では,各家庭の庭で鳥に給餌をする習慣を持つ人が少ない.この原因として,日本はバードウォッチャーの数が少ないので給餌をする人も少ないという可能性と,バードウォッチャーの数とは無関係に給餌をする人が少ないという可能性の両方が考えられる.どちらで説明できるか,あるいは両方ともが必要かを明らかにするために,本研究では,日米英の3か国で,バードウォッチャー数の指標として,野鳥観察に関わる団体の会員数を調べた.その結果,会員数は日本において総数においても人口当たりの数でも最も少なかった.さらに,野鳥観察に関わる商品に対する購買力と給餌に関わる商品に対する購買力を比較するために,アマゾンのネットショッピングサイトで,給餌に関わる商品と野鳥観察に関わる商品のレビュー数と価格を3か国間で比較した.その結果,米英では,野鳥観察よりも給餌に関わる商品に対するレビュー数が多かったが,日本では逆に野鳥観察に関わる商品に対するレビュー数のほう多かった.また,給餌に関わる商品と野鳥観察に関わる商品の,相対的な平均価格は,どの国も,野鳥観察に関わる商品のほうが高かったが,日本においてもっともその差が大きく,給餌よりも野鳥観察に,より費用をかけていることが明らかになった.以上のことから,日本で給餌の習慣がないのは,バードウォッチャーが少ない効果もあるが,それだけでは説明できず,給餌に対する意欲そのものが,他2国よりも低いことが示唆された.