著者
角崎 丈司 三重野 雄貴 浜出 百合菜 青木 俊介
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.25-36, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
38

精油の効能については経験的に確認されているが,その構成成分の生体における作用機序については多くが明らかにされていない。本研究ではケモインフォマティクスの各種手法を用い精油構成化学成分の病原体であるMycobacterium属およびStaphylococcus属への抗菌作用機序を解明することを目的とした。精油化学成分と標的タンパク質のドッキングシミュレーションを行い,そこで選択された23種の精油に関し抗菌作用の検証を行ったところ,6種の精油において抗菌活性が見られた。抗菌活性を持つ精油を併用時の抗菌作用の検証を行い,複数精油の併用による抗菌活性の相乗効果を見いだした。さらに,シミュレーションならびに実験結果より8種の精油構成化合物を入手し,単独での抗菌作用の検証から,7種類の化合物に抗菌作用を見いだした。これら化合物を併用した際の抗菌作用の検証実験からは,有意な相乗的抗菌作用を示す化合物の組み合わせが確認された。また,抗菌活性を持つ精油化学成分と予想される標的タンパク質との相互作用解析より,結合モデルを予測した。今回の研究結果からケモインフォマティクスの応用は,精油の抗菌作用の分子レベルでのメカニズム解明に有効であると考えられた。