著者
浦和 博子
出版者
岐阜聖徳学園大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

植物体の局所に、目的とする遺伝子の発現を誘導する方法は既にいくつか報告されているが、それらの方法では、遺伝子発現は組織レベルに留まり細胞レベルで発現を誘導することは難しい。刺激応答の細胞レベルでの解析や細胞間シグナル伝達の解析には、細胞レベルでの遺伝子発現誘導が不可欠である。本研究の目的は、IR-LEGO(Infrared laser evoked gene operator)を用いて、赤外線を植物体に照射し、加熱により熱ショック応答を誘導し、目的の遺伝子を細胞レベルで発現させる系を確立することである。前年度は、シロイヌナズナの根における高効率の照射法を確立した。平成24年度においては、培養法および、照射法の検討を行い、シロイヌナズナの胚軸、茎頂分裂組織での遺伝子発現誘導法を確立した。根への照射とは異なる対物レンズを用いるなど、照射法を変えることにより、これら組織への照射を可能とした。また、前年度に照射法を確立したシロイヌナズナ根に関し、その根端領域において、各種細胞を区別した遺伝子発現誘導法を確立した。さらに、このシステムを用いた遺伝子発現誘導により「植物細胞場」を解析するには恒常的な遺伝子発現誘導系を確立する必要があると考えられた。そこで、前年度より、Cre/loxPシステムを用いたGatewayシステムのディスティネーションベクターの作製を行ってきたが、平成24年度は、ディスティネーションベクターのバリエーションを増やすなど、有用性を向上させた。このベクターは目的遺伝子のPCR断片さえ準備すれば、Gatewayシステムを利用し、容易にloxP配列の下流に蛍光タンパク質との融合タンパク質として目的遺伝子を作出できるように設計している。