著者
浦山 文隆 古川 睦久 小澤 清 土佐 正弘 木村 秀夫
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.81-86, 2007 (Released:2007-11-16)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

宇宙環境下において宇宙機用材料等から放出される分子状汚染物質は宇宙機表面へ付着し,熱制御材の太陽光吸収率の増加や光学系の反射率・透過率の低下を引き起こすことで,ミッションへ悪影響を及ぼすことが知られている.宇宙機表面に対する分子状コンタミネーション付着防止に関する基礎的な知見を得るため,真空中・紫外線照射環境下での光触媒による付着防止実験を行った.コンタミネーションモデル物質として,スクアレン,テトラメチル・テトラフェニル・トリシロキサン,オレアミド,フタル酸ジエチルヘキシルを実験に用いた.また,光触媒には二酸化チタン粒子,二酸化チタンをコーティングした基板を用いた.二酸化チタンには,真空中においてもすべてのモデル物質に対する重量減少効果が観察された.また,二酸化チタンをコーティングした基板については,紫外線照射時間の経過とともに透過率が増加する現象が観察された.
著者
浦山 文隆 渡辺 吉男 矢野 敬一 馬場 尚子
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-30, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

太陽観測衛星「ひので」可視光望遠鏡には分子状コンタミネーション付着にセンシティブな光学系が搭載されている.これら付着は,望遠鏡内部に使用されている有機材料からのアウトガスにより生じる.「ひので」は日本時間2006年9月23日に打ち上げられ,同年10月25日から可視光望遠鏡による太陽観測が開始された.観測開始から約2カ月の間,光学系の一つである排熱鏡近傍の温度が急上昇した.この原因として,コンタミネーションが排熱鏡に付着し,排熱鏡の太陽光吸収率が増加した可能性が高いことが判った.また,フライト前に実施した数値解析結果と比較したところ,主鏡及び副鏡での太陽光吸収率変化Δαs計算値は温度データからのΔαs概算値に傾向が概ね一致した.しかしながら,排熱鏡でのΔαs計算値は温度データからのΔαs概算値を下回った.数値解析においては,材料表面からのコンタミネーションの脱着効果,汚染源となる材料の急激な温度上昇を考慮する必要があることが判った.