- 著者
-
海江田 修至
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
DDEF1-SH3ドメイン-APC-SAMPモチーフ複合体の立体構造とダイナミクス解析を、溶液NMRを用いて行った。腫瘍抑制因子APCは大腸癌の原因であり、SAMPモチーフと呼ばれる特徴的なアミノ酸配列がその腫瘍抑制能に不可欠である。APC-SAMPモチーフの詳細な役割は未知な点が多いが、DDEF1-SH3ドメインとAxinのRGSドメインと相互作用することはわかっている。これらのドメイン間には構造的類似性がなく、SAMPモチーフがいかにして2つの異なるドメインに認識されるのか不明であった。また、SAMPモチーフには、SH3ドメインの認識配列であるPxxPモチーフに相当する配列が含まれておらず、SAMPモチーフとDDEF1-SH3ドメインとの相互作用の構造的基盤解明は非常に意義深い。決定されたDDEF1-SH3ドメイン-APC-SAMPモチーフ複合体の構造から、SAMPモチーフは、SH3ドメインと相互作用する際に、polyproline type IIヘリソクスを形成することが明らかとなった。この構造は、PxxPモチーフがSH3ドメイン上で取るものと同一である。他のSH3ドメインとリガンドの構造と比較すると、SH3ドメインとの相互作用には、PxxPにある二つのプロリン残基は必須ではなく、プロリン残基一つでも十分に相互作用する可能性があることが示唆された。NMRを用いた複合体のダイナミクス解析の結果と合わせると、SAMPモチーフのうち、SH3ドメインとAxinとの相互作用に関わる残基は異なり、それにより、二つの複合体中でのSAMPモチーフの構造も大きく異なっていることが明らかとなった。