著者
海老原 秀喜
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

申請者は、リバースジェネティクス法(人工的にウイルスを作成する技術)等の分子生物学的技術と動物実験を駆使し、ヒトに重篤な出血熱を惹起するエボラウイルス(EBOV)のうち強毒ザイールEBOV (ZEBOV) と近縁のマールブルグウイルス(MARV)、出血熱を惹起しないレストンEBOV (REBOV)の3種類のウイルスタンパク質(GP, VP35, VP24)の病原性に関わる機能(主に免疫御能等)を比較し、EBOVタンパク質の病原性発現における役割に焦点を絞って研究を実施する。本年度(平成20年度)は、以下の研究を遂行した。(1) 新たなエボラ出血熱の動物モデルの確立 : ゴールデンハムスターを用いたエボラウイルス感染モデルを開発した。このモデルはヒトと同様の病態を示すことから、今課題の病原性の研究のみならずワクチン・治療法の開発にも有用なモデルになる事が期待される。(2) フィロウイルスの糖タンパク質を発現する組換え水泡性口内炎ウイルス(VSV)ライブラリーの構築 : 現存する5種類のエボラウイルス糖タンパク質及び5種類のマールブルグウイルス株の糖タンパク質を発現するVSVを作成した。このシステムを確立したことにより、フィロウイルスの糖タンパク質による免疫抑制能の研究をヒトの初代培養細胞系を用いて遂行可能となった。(3) 強毒型マールブルグウイルス・アンゴラ株のモルモットモデルの確立とリバースジェネティクス法の確立 : 2005年に致死率90%以上の流行を起こしたアンゴラ株のモルモットモデルを確立し、さらにリバースジェネティクス法の確立を実施中である。(4) さらにエボラウイルスのVP35及びVP24のインターフェロンシグナリング能の比較を行った。