著者
大岩 加奈 岸 愼治 海老田 ゆみえ 松田 安史 田居 克規 浦崎 芳正 大越 忠和 今村 好章 山内 高弘
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.607-613, 2017-08-31 (Released:2017-09-22)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

症例は55歳,男性.15年前の冬季にRaynaud症状を認め,寒冷凝集素症(Cold agglutinin disease,CAD)と診断されたが,症状は軽度のため無治療で経過観察されていた.感冒様症状の後2週間持続する息切れを主訴に前医を受診し,溶血性貧血と黄疸,脾腫を認め紹介となった.血液検査では高度の溶血性貧血,寒冷凝集素と可溶性インターロイキン2受容体の高値を認めた.CTで脾腫を認め,FDG-PETでは脾臓と骨髄に集積亢進を認めた.骨髄は過形成でCD20+,CD5+,CD10-,κ鎖+,bcl-2+の異常細胞を約60%に認めた.以上から,CADによる溶血性貧血を合併したB細胞リンパ腫と診断した.輸血加温システムを用いて赤血球輸血を行い,化学療法(R-CHOP療法)により脾臓縮小と溶血改善が得られ,現在rituximab単剤で維持療法を継続している.CADは特発性と続発性に分類され,いずれも稀ではあるが悪性リンパ腫合併の報告がある.rituximabを含む化学療法が有効とする報告がある一方,CAD合併悪性リンパ腫例には多剤併用化学療法も不応とする報告もあり更なる症例の蓄積を要する.