著者
小林 茂雄 海野 宏樹 中村 芳樹
出版者
人間・環境学会
雑誌
MERA Journal=人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-8, 2000-05-01

夜間商店街の視環境は、街路灯や看板灯、ウィンドゥディスプレイの光など多様な照明要素で構成されているが、これらの光環境は一般的に20時前後を境にして急激に変容する。これは店舗が閉店すると同時に付随する看板灯や内部照明を全て消灯してしまうからである。看板灯や店舗からの漏れ光は、屋内の人間活動と結びついていることから、こうした光は外部に対して単に視覚的な明るさを与えるだけでなく、人の気配を感じさせる働きがあるのではないかと考えられる。本研究は、店舗に付随する照明要素の心理的な働きを理解することによって、閉店後における街路の環境を改善する手がかりを得ようとしている。はじめに、開店時から閉店時にかけて商店街光環境の移り変わりを体験させ、その印象を把握する実験を行った。その結果、閉店後の光環境は全般的に不安で監視性が低く、監視性の低さは店舗から漏れ出す光が強く関与していることがわかった。そこで次に、店舗から漏れ出す光量やファサードの透視性を変数とした評価実験を行ったところ、路上で感じられる人の気配や安心感は、漏れ光の強さだけでなく、店舗ファサードの形態と関わりがあることがわかった。