著者
鈴木 敏弘 海野 良輔 山里 一英 小泉 幸道 石川 森夫
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.129-134, 2020-11-17 (Released:2021-12-11)
参考文献数
20

Marinilactibacillus 属や Alkalibacterium 属などの好塩性・好アルカリ性乳酸菌は塩類の影響を受ける海洋環境からの分離例が多い。一方で、これらはチーズをはじめとする塩分を含む発酵食品にも存在するが、その由来については明らかにされていない。本研究では、同乳酸菌群の分離源の多様性の解明を目的として、発酵食品製造に用いられる可能性が考えられる海水天日塩から好塩性・好アルカリ性乳酸菌の分離を行った。供試した 23 点の海水天日塩のうち、フランス産の 2 点から集積培養によって Alkalibacterium 属乳酸菌を分離した。分離株は海洋環境より分離・報告された好塩性・好アルカリ性乳酸菌 Alkalibacterium putridalgicola と同定され、生理学的性状も類似していた。一方で、分離株は NaCl 20% 以上の耐塩性を有さず、生育に糖類を要求し、天日塩への付着時には増殖はしていない可能性が推察された。これらのことから天日塩には海洋環境で生育する好塩性・好アルカリ性の乳酸菌が付着、増殖はしないものの生存し、天日塩を使用した様々な食品製造環境に伝播している可能性が考えられた。