著者
畠山 智充 郷田 秀一郎 海野 英昭
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.28, no.161, pp.J55-J60, 2016-05-25 (Released:2016-05-25)
参考文献数
23

タンパク質毒素は標的細胞膜脂質との特異的な相互作用を介して非常に効率的に毒性を示す。細菌由来のタンパク質毒素の中には、標的細胞に結合した後、細胞膜中でオリゴマー化することにより膜貫通ポアを形成し、結果として細胞死を引き起こすものが存在するが、このようなポア形成メカニズムは、真核生物由来の溶血性レクチンの作用とも共通する。我々はナマコの一種であるCucumaria echinataから単離された溶血性レクチンの糖結合活性およびオリゴマー化活性に関して詳細に検討し、そのモノマーおよびオリゴマー状態の両者における構造解析を行った。その結果、このレクチンのポア形成過程において大きなコンフォメーション変化を生じることが明らかになった。これらの結果は、細胞表面上における糖質ならびに脂質との相互作用によって引き起こされるタンパク質の著しい構造変化の例を示すものである。