- 著者
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深津 周太
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.2, pp.18-34, 2016 (Released:2017-03-03)
- 参考文献数
- 12
本稿は,‘量程度の小ささ’を表す《ちょっと類》副詞に見られる〈ちょっとの型〉と〈ちょっとした型〉という二つの連体表現の型について,中世における両者の関係とその後の展開を論じたものである。 まず中世における〈ちょっとの型〉に着目すると,当期に見られる「ちっとの/そっとの」は【程度】【量】を表す点で共通するが,一方で「そっとの」には「そっとの間」のような時間の【存続量】が中心的な意味機能として備わっている。これは「そっと」の量程度用法が,【素早さ】という時間に関わる機能用法を出自とすることによる。 一方,〈ちょっとした型〉は通史的に【程度】しか表さないため,この型が新出する中世の「そっと」領域においては「そっとの:そっとした」=【量・存続量:程度】という形式と意味機能の対応関係が芽生えることとなった。この「そっとの:そっとした」という形式間の機能分担は,近世以降の「そっと」衰退に伴い「ちっと/ちょっと」に引き継がれ,その結果〈ちょっとの型:ちょっとした型〉という型による機能の表し分けがなされることとなった。