著者
深澤 翔太 田邉 憲昌 高藤 恭子 米澤 悠 原 総一朗 夏堀 礼二 千葉 豊和 近藤 尚知
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.176-183, 2020-06-30 (Released:2020-08-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,2種の口腔内スキャナーと,1種の歯科技工用スキャナーを使用して,多数歯欠損を想定したインプラントボールアバットメント間における距離の真度,精度の比較検討を行い,口腔内スキャナーの精確さを評価することである.下顎インプラント実習用模型にインプラント体を4本埋入した.舌側部に校正用基準球を設置し,本研究のマスターモデルとした.マスターモデルのインプラント体に,ボールアバットメントを装着後,接触式三次元座標測定機による三次元形状計測を行った.続いて,2種の口腔内スキャナー(3M True Definition Scanner:TDS,3Shape Trios3:TR3),1種の歯科技工用スキャナー(KaVo ARCTICA Auto Scan:KA)を用いて,三次元形状データを採得した.得られた三次元形状データを基に,立体画像解析用ソフトウェアで,4個のボールアバットメント間の距離に関して真度と精度の比較解析を行った.ボールアバットメント間の測定部位における真度,精度に関して口腔内スキャナー群は,歯科技工用スキャナーよりも誤差が大きかった.口腔内スキャナー群は,ボールアバットメント間の距離が増加すると誤差が増加する傾向を示した.歯科技工用スキャナーはボールアバットメント間の距離の増減にかかわらず,真度・精度ともに安定していた.現状の口腔内スキャナーによる光学印象法は,真度,精度の観点から多数歯欠損では適用は困難であり,少数歯欠損における口腔インプラント治療への臨床応用が可能であることが示唆された.
著者
田中 晋平 高場 雅之 深澤 翔太 渡邊 理平 夏堀 礼二 近藤 尚知 馬場 一美
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-31, 2018 (Released:2018-05-13)
参考文献数
9

インプラント治療はCT(Computed Tomography)のDICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)データがデジタルデータであることから,デジタル・デンティストリーと親和性が高く,比較的早期からデジタル技術が導入されてきた.シミュレーションソフトウェアやガイドサージャリーやナビゲーションシステムによる安全な手術などはもとより,今日ではCAD/CAMを用いたインプラント上部構造が広く普及した. 光学印象の普及はデジタルワークフローの枠組みを技工のみでなく,臨床手技にまで拡大するもので,すでに一部のシステムにおいては,光学印象からインプラント上部構造製作までが系統的に整備され,フルデジタルワークフローによるトップダウントリートメントは,完成形に近づいたといえよう. 一方で,光学印象に関連したデジタルワークフローは従来のワークフローと比較して柔軟性に劣る,従来のワークフローで得られる最高レベルの精度が担保されていない,など幾つかの制限があることも事実である.本稿では,インプラント治療における光学印象の活用の変遷と現状を提示するとともに,今後の展開について,現在直面している技術的限界に焦点を当てながら考察する.