著者
深見 佳代
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.47-56, 2016 (Released:2017-12-01)

スウェーデンの医療制度は、医療にアクセスするまでの待ち時間の長さが指摘されてきた。しかしその傾向は近年改善しつつあるようである。最初に国レベルで対策が行われたのは1987年で、3種類の手術について追加的資金が分配された。1992年には10手術について3か月を待ち時間の上限とする最大待ち時間保証が開始された。1997年にはより普遍的な利益のため、医師に会うまでの時間について、2005年には手術や治療を受けるまでの時間についてそれぞれ保証が拡大された。この保証により実行力をもたせる目的で、2009年には経済的インセンティブを付与する計画が開始され、2010年には保証が「患者の権利」として法制化された。これらは、待ち時間の改善という一定の成果を上げているものとして評価できるものの、根本的な解決につながるものではないため、現場に負担がかかっていることが予想される。今後は待ち時 間の原因についてより詳細な分析が必要である。