著者
深見 泰孝
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.613, pp.613_129-613_148, 2011-06-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
46

明治期に我が国では,仏教系生命保険会社と呼ばれる生命保険会社が設立される。この会社は,教団や僧侶が直接,間接的に関与したことが特徴である。保険思想が十分に普及していなかったとされる当時,多くの門信徒を抱える教団を活用した保険募集は,募集を優位にすすめる方策と考えられた。ところが,多くの会社が明治期に破綻や合併,支配権異動などで仏教系生命保険会社としての営業活動を終えている。そこで,本稿では,これまで明らかにされていなかった仏教系生命保険会社の支援形態の差異に注目し,この違いが経営に与えた影響,破綻要因に与えた影響を分析し,また,仏教系生命保険会社が保険業史上に果たした役割について検討した。
著者
深見 泰孝
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.602, pp.602_1-602_30, 2008-09-30 (Released:2010-10-15)
参考文献数
39

明治20年代に,各宗仏教団体を中心とするか又は宗教団体を背景とする生命保険会社が続々と設立されたことは,わが国の生命保険業史上における特徴の一つに挙げられている。わが国で仏教教団が生命保険事業へ進出した理由を解明するには,個別の仏教系生命保険会社の内部史料を用いて分析することが必要となる。本稿では,真宗信徒生命に関与した本願寺の『定期集会筆記』という議会議事速記録を用いて,真宗信徒生命の設立理由を検討した。その結果,キリスト教に対する危機感を幕末・維新期から醸成していた本願寺教団が,外国人の内地雑居を目前に控え,キリスト教対策の慈善事業費を調達することを目的として設立された会社であることを明らかにした。そして,その中心には,赤松連城や島地黙雷といった留学経験のある役僧がいたことが明らかとなった。
著者
深見 泰孝
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.610, pp.610_17-610_36, 2010-09-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
34

わが国では,明治20年代後半から30年代にかけて,世界の保険業史上でも珍しい,宗教教団が関与した生命保険会社が設立された。しかし,そのほとんどは明治期に破綻や解散,合併によって,その歴史に幕を閉じている。これらの中には,教団が設立や経営に関与したものと,僧侶個人が関与した会社がある。本稿では,このうち前者の破綻理由に,教団が関係しているが故の破綻要因があったのではないかと仮説を立て,日宗生命を中心に六条生命,真宗信徒生命と比較し分析した。その結果,経営者の教団内での地位の高さが,彼らの規律づけを困難にし,一般の事業会社とは異なり,出資比率の多寡だけでなく,宗教的な地位や教団内での地位が発言力に影響していたことも破綻の一因であると結論づけた。