著者
神戸 三智雄 藤本 文弘 水上 優子 稲波 進 深谷 勝正
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.347-351, 1997-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
1

アルファルファ菌核病(Sclerotinia trifoliorum Eriks.) は,晩秋から早春にかけて発病し,茎腐れ症状を呈し,株立ちを減少させる重要病害である。この病害はクローバ,レンゲなど他のマメ科車種にも罹病する多犯性病害であることから抵抗性品種の育成は難しいとされてきたが,循環選抜により抵抗性育種が可能であることを明らかにした。ほ場条件で人工接種による抵抗性検定法を開発し,愛知育成のナツワカバ,タチワカバ及びフランス,アメリカから導入した1O品種・系統による約3,000個体を基礎集団として,1983年から集団選抜と母系選抜を9世代繰り返した。各世代の選抜強度は2.0〜7.0%,集団の大きさは55〜100個体としてランダム交雑し(Table 1),選抜1世代から9世代に当たるSR 58-1〜SR 58-9の選抜系統について抵抗性検定を2回の試験に分けて実施した。ほ場検定における1〜5世代系統の生存率についてみるとSR 58-1,SR 58-2では12.4%,17.6%と低く,基礎集団の一部としたナツワカバと差がなかった。3世代系統から高くなり,5世代系統のSR 58-5は57.6%の最も高い生存率を示した(Table 3,Fig.1)。5-9世代系統の検定ではSR 58-5の42.4%に比べSR 58-9は62.9%の明らかに高い生存率を示した(Table 4)。ファルコナーの方法による累積選抜圧と選抜反応との関係から実現ヘリタビリティを求めると初期世代はh^2=0.078と低かったが,3〜9世代ではh^2=O.364と高い値を示した(Fig.4)。このことから,基礎集団では菌核病の抵抗性に関与する遺伝子の働きは小さく,その頻度も低いため,1,2世代の選抜ではほとんど抵抗性の向上が認められなかった。しかし,選抜を繰り返すことによって集団内の抵抗性遺伝子の頻度が高くなり,9世代系統のSR 58-9では大きな選抜反応が得られたと考えられた。