著者
淺井 康行
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.6, pp.320-324, 2009 (Released:2009-12-14)
参考文献数
5

創薬研究においてcell–based assayと呼ばれる細胞機能性試験は,簡便・迅速なアッセイ方法として頻用されている.これまでの細胞機能性試験で使われる細胞は,旺盛な増殖能を有するCHO細胞やHeLa細胞といったがん化した動物由来あるいはヒト由来の細胞株に目的とするターゲット分子の遺伝子を導入したものであった.しかし,このような細胞を用いたアッセイ系の一部はヒトへの外挿性はあまり高くはないことが経験的にわかってきた.一方,外挿性の低さを克服するためのフェノタイプ(形質)利用アッセイで主として用いられる初代培養細胞は,実験に用いるまでの工程が煩雑である上に,得られた細胞が脆弱であったり,ロット間のバラツキが大きかったりHTSに必要な細胞量を確保することが難しい細胞が多いことが欠点であった.このような状況から,これまで使用されている細胞株のように大規模な実験に使用できるほどの細胞量を容易に確保することができ,かつ,初代培養細胞のようにnativeに近い細胞として幹細胞由来細胞が期待され実用化され始めている.ES/iPS細胞由来心筋細胞を用いたQT延長アッセイ系(QTempo:QT prolongation Examination with Myocardia derived from Pluripotent cell)は,化合物を創薬早期に検索し創薬後期以降での“ドロップアウト”を少なくすることを主眼に置いて研究開発されてきた.QT延長関連試験は用いる細胞材料や検出法によりいくつかの方法があるが,本法はAPD(action potential duration)検出手法とヒトへの創薬に適していると考えられているサルES細胞やヒトiPS細胞を組み合わせたものである.われわれが構築したアッセイ系において化合物を評価することでよりヒトへの外挿性の高い心毒性の予測が可能となる.