著者
淺野 良成
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_256-2_279, 2020 (Released:2021-12-15)
参考文献数
33

本論文では、日本の有権者が外交・安全保障イシューを重視する条件を、置かれた情報環境に注目して検討する。近年、選挙で外交・安全保障を重視する有権者が増加傾向にある。一方で、日常生活で実感し難い対外関係を重視する人たちの特徴について、投票行動研究は十分な説明を用意していない。また、マスメディア研究ではしばしば、有権者の関心はメディアの報道総量の多寡が規定するとされるが、その説明力は必ずしも高くない。しかし、外交問題が直接経験し難い分野である以上、その重視度と情報環境が無関係だとも考えにくい。そこで本論文では、報道総量の多寡とは異なる側面から情報環境を取り上げ、選挙で外交争点が重視される条件付けを検討する。具体的には、メディアが外交・防衛問題の報道で取り上げるアクターの党派的な偏りへ注目する。分析の結果、報道対象が与党へ偏った新聞に接触した場合、有権者は外交・安全保障に関わる主要政党の主張をより幅広いスケール中で認知し、選挙でも外交・安全保障問題を重視する傾向を確認した。