著者
永田 晋治 清家 瞳
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.31-37, 2021-04-01 (Released:2021-04-22)
参考文献数
66

昆虫の摂食行動も,他の生物と同様に内分泌系により支配されている。ペプチド性因子はその中心的役割を担い,エネルギー恒常性を維持している。栄養分依存的なメカニズムとしては,他の生物と同様,インスリン様ペプチド (ILP)と脂質動員ホルモンAKH(グルカゴンの昆虫におけ る機能的アナログ)により血糖値や体液中の脂質レベルを調節する。その上流や下流では,他のペプチド性因子が機能し,ホルモンリレーを作り,様々な栄養条件に対応できるようになっている。また,摂食行動に重要とされている各組織には,内分泌細胞が存在し,ペプチド性因子と摂食行動との強い関わり合いが予想できる。これらのペプチド性因子は,腸管の蠕動運動を調節することが知られているので,腸管の蠕動運動や口の動きなど摂食行動にかかわる運動はペプチド性因子が直接制御していると考えられる。 つまり,ホルモンによる統合的な調節メカニズムが摂食行動を制御しているのであろう。