著者
清松 敏雄
出版者
日本経営分析学会
雑誌
年報経営分析研究 (ISSN:09110747)
巻号頁・発行日
no.28, pp.13-20, 2012-03-31

本稿では,新規株式公開前の利益調整行動について,上場審査基準に着目した実証分析を行った。具体的には,サンプルとして近年ジャスダック証券取引所に上場した企業を用い,利益調整前の利益が上場審査基準を満たしているかどうかによってサンプルを分類した上で,それぞれのポートフォリオのサンプルの裁量的発生高の平均の差の検定等を行った。この際,本稿では,証券取引所の上場審査基準として明文化されている内容に加え,明文化はなされていないものの,上場前において経常増益という事実上上場審査基準と同様に要求される事項も考慮に入れている。分析の結果,利益調整前の利益が上場審査基準を満たしていない企業が,明示的な上場審査基準を満たすため,あるいは黙示的な上場審査基準を満たすために上場直前期に利益増加型の利益調整行動を行っている可能性があるとの示唆を得た。