著者
清武 貴子 吉國 謙一郎 原 純 大木 浩
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.13-18, 2020
被引用文献数
3

<p>はじめに 鹿児島県立大島病院はドクターヘリを保有する救命救急センター(以下,救命センター)を併設している.日本赤十字社鹿児島県赤十字血液センター(以下,鹿児島日赤)と委託契約していた民間の血液製剤備蓄所が2018年3月末に血液製剤取扱い業務から撤退した.以後,当院では血液製剤の院内在庫を置き輸血医療に対応している.危機的出血を伴い鹿児島日赤から血液搬送が間に合わない際に,院内血輸血を実施している.対象と方法 救命センター開設後の2014年から2018年までの期間に実施した18症例の後方視的カルテ調査を行い院内血に至る要因を検討した.結果 院内血輸血実施理由の51%が,血小板減少症や血小板製剤が届かない等の血小板に関係する問題であった.院内血輸血の結果,血小板数及びフィブリノゲン濃度が有意に上昇した.考察 奄美大島地区緊急時供血者制度連絡協議会が作成した登録者名簿に記載されている島民の協力の下,院内血が実施される.安全面や供血者への負担も考慮が必要である.結語 院内血輸血によりフィブリノゲン濃度が止血可能域まで上昇した.クリオプレシピテートやフィブリノゲン濃縮製剤の有用性が待望される.</p>