著者
長嶺 嘉通 村山 裕美 大木 浩
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.441-448, 2020-09-15 (Released:2020-10-31)
参考文献数
14

近年麻酔科医不足が深刻な問題となっている.それに対し,特定行為研修制度等により周術期チーム医療がさらに推進された.今回われわれは周術期業務の質の向上を目的として,鹿児島県域麻酔科関連20施設の麻酔科部長を対象に周術期業務に関する「現状」と「今後の期待」についてアンケートを行った.その結果,周術期業務の47%において麻酔科医以外のメディカルスタッフへの業務移譲が期待されていた.麻酔行為の補助を行う看護師の育成と普及には時間がかかる.そのためまずは一般看護師やメディカルクラークでも実施可能と考えられる術前・術後の管理業務から,タスクシフティングを促進すべきである.
著者
中村 康則 大木 浩司
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.259-264, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
20

乳酸菌Lactobacillus helveticusは,発酵中に乳蛋白質を分解し,潜在するペプチドvalyl-prolyl-proline,isoleucyl-prolyl-prolineを産生する.両ペプチドは,アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する.この酵素は,アンジオテンシンIに作用し,強力な血圧上昇物質アンジオテンシンIIを産生することで知られる.動物実験および in vitro試験の結果は,経口摂取された両ペプチドの一部が,インタクトな形で消化管より吸収され,組織レニン・アンジオテンシン系に作用し,血圧を降下させることを示唆している.我々が実施したヒト飲用試験では,両ペプチドを含有する発酵乳の摂取により,高血圧者の収縮期および拡張期血圧が有意に降下することを確認した.アンジオテンシン変換酵素は,NO産生を促進するブラジキニンを分解・失活する酵素でもある.従って,両ペプチドには,NOによる血管内皮機能の維持,動脈硬化予防の可能性が期待される.NO合成酵素阻害剤NG-nitro-L-arginine methyl ester hydrochlorideを投与したラットの胸部大動脈を摘出し,アセチルコリンに対する内皮応答性を調べた結果,いずれのペプチドも阻害剤と同時摂取させたとき,阻害剤による応答性低下の改善を認めた.また,我々が実施したヒト試験では,両ペプチドの摂取により,プレスティモグラフィーにおける上腕の駆血解放後の血流量の増大が認められ,このとき,血圧に変化はなかったため,両ペプチドによる,血管内皮機能の改善が示唆された.以上のことから,両ペプチドは,血圧降下という作用のみならず血管内皮機能改善作用によってメタボリックシンドロームの予防,改善に寄与するものと考えられる.
著者
清武 貴子 吉國 謙一郎 原 純 大木 浩
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.13-18, 2020
被引用文献数
3

<p>はじめに 鹿児島県立大島病院はドクターヘリを保有する救命救急センター(以下,救命センター)を併設している.日本赤十字社鹿児島県赤十字血液センター(以下,鹿児島日赤)と委託契約していた民間の血液製剤備蓄所が2018年3月末に血液製剤取扱い業務から撤退した.以後,当院では血液製剤の院内在庫を置き輸血医療に対応している.危機的出血を伴い鹿児島日赤から血液搬送が間に合わない際に,院内血輸血を実施している.対象と方法 救命センター開設後の2014年から2018年までの期間に実施した18症例の後方視的カルテ調査を行い院内血に至る要因を検討した.結果 院内血輸血実施理由の51%が,血小板減少症や血小板製剤が届かない等の血小板に関係する問題であった.院内血輸血の結果,血小板数及びフィブリノゲン濃度が有意に上昇した.考察 奄美大島地区緊急時供血者制度連絡協議会が作成した登録者名簿に記載されている島民の協力の下,院内血が実施される.安全面や供血者への負担も考慮が必要である.結語 院内血輸血によりフィブリノゲン濃度が止血可能域まで上昇した.クリオプレシピテートやフィブリノゲン濃縮製剤の有用性が待望される.</p>