著者
吉田 紗由美 清水 みゆき
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.72-85, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
13

本研究では新聞記事を質的情報として収集し,遺伝子組み換え食品をめぐる記事上の議論の特徴や推移について,計量テキスト分析を行った.計量的手法のデータとして,読売新聞を採用し,遺伝子組み換え作物の国内輸入が開始した1988年12月から,2018年11月までの29年11か月の記事を収集した.テキストの分析には,「KH Coder」を利用し,データ中から語を抽出し,それらの出現頻度や相関関係を分析して,有用な情報の抽出を試みた.各年の記事数,出現語の分析では,表示に対する記事が一時的に増加していたことが明らかとなった.この結果を受けて,遺伝子組み換え食品の流通と表示に注目して,4つのフェーズを設定し,対応分析をこれら期間について行った.対応分析の結果と,クラスター分析でのグルーピング,共起ネットワーク分析の結果から,遺伝子組み換え作物の輸入開始から遺伝子組み換え表示制度成立迄(1996.10~2001.3),および遺伝子組み換え表示制度成立から消費者庁に食品表示業務移管迄(2001.4~2009.9)の期間において活発な報道があったことを明らかにした.また,安全についてはコンスタントに報じられていたが,表示については期間集中的に報じられていたことを明らかにした.