著者
清水 チエ 大山 篤
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

歯科研修医の医療事故防止をはかる目的で、平成17年度と18年度第2年次研修医101名(男性31名、女性70名)に対し、医療事故の実態を把握し、4種の心理テストSDS,CMI,MAS,STAIによる心理的特性を分析した。1)研修医の医療事故等に関する年間集計アクシデント(医療事故)は、平成17年度26.5%、平成18年度は19.2%の研修医が経験ありと報告した。内訳は、切削器具による口腔内の損傷が6件、治療終了後または根管治療中に気分が悪くなった例が4件、その他の順であった。医療事故により後遺症の残った患者はいなかった。ニアミス(ヒヤリ・ハット)の経験は、平成17年度が69.4%、平成18年度は75.0%であった。最も多い順から、バーの着脱が31件、タービン・バーによる損傷が17件、その他の順であった(いずれも複数回答)。2)心理的特性の分析SDSでは63.0%の者が抑うつ傾向のない正常領城で、中等度以上の抑うつ傾向を有する者は4.0%にみられた。CMIでは87.6%の者が神経症傾向のない正常領域であり、IV領域の者は2.0%であった。MASでは72.0%の者には自覚しうる顕在性の不安傾向がなかった。STAIでは、37.9%の者の特性不安が高かった。4種の心理テストにおける医療事故あり群と医療事故なし群との間には、ほとんど有意差があるとはいえなかった。これらの傾向については、医療事故あり群の数が少ないため、今後も事例を集積して慎重に検討していくことが大切である。