著者
風間 信隆 松田 健 清水 一之
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,近年のドイツの企業システムとコーポレート・ガバナンスの動向を検討し,その結果,1)1990年代以降,ドイツの株式市場が外国人機関投資家の株式保有の増加とともに変容し,株式市場による外部コントロールが増大してきたこと,2)「株主価値重視経営」(「選択と集中」によるリストラと短期的利益重視による企業価値の極大化)が経営者に支持されてきたが,これが逆に長期的視点に立つ能力構築を妨げるとともに,業績連動報酬による経営者の高額報酬と社会的格差の拡大に結び付くものとして批判されてきていること,3)1990年代末から2000年代初頭にかけてドイツ工業連盟(BDI)会長ロゴウスキーの「共同決定は歴史の誤り」発言に見られるような,労使共同決定批判が展開されてきたが,今日ではむしろ共同決定に対する再評価が起きていること,4)しかし,グローバル化に伴い,ドイツの伝統的企業システムを支える諸制度(共同決定や労使関係,株式市場,会社機関等)も大きく変化しており,これによってドイツの企業統治の在り方も進化を遂げていることを明らかにした。