著者
ハーマッハー ヴェルナー 宮﨑 裕助[訳・解題] 清水 一浩[訳]
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科共同研究プロジェクト「世界の視点をめぐる思想史的研究」新潟大学人文学部哲学・人間学研究会
雑誌
知のトポス : 世界の視点 : topos = 知のトポス : 世界の視点 : topos (ISSN:18809995)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.173-206, 2016-03

In: Kontroversen, alte und neue. Akten des VII. Internationalen Germanisten-Kongresses Göttingen 1985, hg. v. Albrecht Schöne, Band II: Historische und aktuelle Konzepte der Literaturgeschichtsschreibung, Tübingen: Niemeyer 1986, S. 5-15.
著者
清水 一浩
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンの思想におけるカント哲学の意義を明らかにしようとするものである。本年度は、三年間の採択期間の最終年度にあたる。本年度に行なわれた具体的な研究活動は、以下の二点に要約される。(一)アリストテレスの術語法・問題構制からカントを再読すること、(二)ベンヤミンの術語法・問題構制の系譜を探究すること。(一)の作業は、昨年度から継続して取り組んできたものである。結果、以下のような点が確認された。第一に、『判断力批判』の思惟の場が、アリストテレスの『弁論術』のそれと類比的に画定されていること。アリストテレスにおける弁論術も、カントにおける判断力の批判も、固有の対象領域をもたないということを存立構造としている。重要なのは、この脱領域性が、両者で共通して「感情」という言葉で表示されていることである。第二に、カントの歴史哲学が『判断力批判』と類比的な位置づけにあること。「歴史」は、判断力と同様に、自然と自由との間に位置づけられる。自然にも自由にも還元されない「普遍史」の構想は「小説」と呼ばれる。この呼び名にふさわしく、『普遍史の理念』のテクストは、極めてレトリカルに構築されている。この第二の点の素描を、カント研究会にて口頭発表した(二〇一〇年二月二八日、於・法政大学)。(二)に関しては、ベンヤミンの神学的な言葉遣いやモティーフを辿ることも目的として、ヤーコプ・タウベス『パウロの政治神学』の研究会を行なってきた(その副産物として、拙訳になる『パウロの政治神学』が近刊の予定である)。これによって、旧約聖書からベンヤミンにいたる神学・哲学・政治・文学の伝統について、幾つかの鍵言葉が再確認された(メシア、自然、イメージ、儚さ、など)。言葉遣いのレベルでこの伝統を引き受け、再考し、再構築するところに、ベンヤミンの超越論的文献学と呼ぶべきテクスト実践があったのだと考えられる。