著者
清水 亜矢子 長 和彦
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.145-152, 2002-02-05

本論は,最近注目を集めている「ひきこもり」について,どういった現象であるかを文献を通して紹介し,また,中学1年時から卒業までの約2年半「ひきこもって」いたA君とのかかわりから,A君の自分の内から外へと変容した経過と,清水のかかわりの変容を検討したものである。A君は出会った当初から「変わろう」という気持ちを持っており,この7カ月半の間に別人のように変わった。しかし,一方で清水は,「何もしなかった」という表現がふさわしいかかわりをしてきた。これは,自然体で向き合ってきたということを意味し,このかかわりがA君にとって丁度良い間合いとなり,清水の「いつでも側にいる」,「いつでも力になる」という態度となって現れ,更に専攻科の人々がA君をあたたかく受け入れてくれたことが加わわったことで,A君は明るく,積極的な対人関係や活動の広がりを見せていった。また,「ひきこもり」者の積極性や努力をサポートする体制の必要性も感じた。