著者
清水 光治 若杉 雅浩 渕上 貴正 波多野 智哉 川岸 利臣 松井 恒太郎
出版者
日本救命医療学会
雑誌
日本救命医療学会雑誌 (ISSN:18820581)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.23-28, 2023 (Released:2023-04-28)
参考文献数
11

【目的】 院外心肺停止への器具を用いた気道確保の是非や最適なタイミングには, いまだ十分なエビデンスがない. JRC蘇生ガイドライン2020では初期心電図波形と関連づけての器具を用いた気道確保の実施タイミングの検討が必要としている. そこで実際の病院前救護での器具を用いた気道確保完了時間に影響を与えている因子を明らかにする目的で本研究を実施した. 【方法】 2013年1月から2021年12月の9年間に白山野々市広域消防本部管内での全心肺停止事案のうち, 外因性を除き内因性かつ器具を用いて気道確保された事案を対象とした. 気道確保完了時間に影響を与える可能性のある因子 (電気的除細動適応可否, 発生場所, 出動隊員数, 救急救命士乗車数, 実施特定行為内容) について, 気道確保完了時間の中央値を算出し, 求めた中央値を基準に器具を用いた気道確保完了時間が短時間群と長時間群の2群に分けて比較検討した. 【結果】 調査対象となった全心肺停止傷病者事案は880件, うち検討対象となった事案は542件であった. 器具を用いた気道確保完了時間の中央値は4分 (最小値1分-最大値24分) であった. 単変量解析では救急救命士2名以上乗車群は救急救命士1名乗車群に比べて (p<0.01), 活動隊員4名以上群は3名群に比べて (p<0.05), 有意に器具を用いた気道確保完了時間が早い結果となった. さらに, 多変量解析を行ったところ, 救急救命士乗車数2名以上 (vs 1名, オッズ比2.809 [95%信頼区間1.889-4.179]) が気道確保完了時間に影響していることが明らかとなった. 【考察】 救急救命士が2名以上乗車することで, 並行して器具を用いた気道確保および静脈路確保・薬剤投与の処置を行えたため, 1名乗車に比べて器具を用いた気道確保完了時間が有意に早い結果となったと考えられる. 【結語】 病院前救護における気道管理戦略において, 単に乗車人数を増やすのではなく, 救急救命士の乗車人数の増加が迅速な器具を用いた気道確保に繋がることが示唆される.
著者
西 大樹 清水 光治 矢敷 和也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.782-788, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
11

目的:病院前救護の場において,救急救命士の経験数など,静脈路確保成功に影響を与える因子を明らかにする。方法:白山野々市広域消防本部の2013年4月〜2019年3月までの7年間で静脈路確保が実施された1,141件を対象とした。結果:年齢,心停止有無,実施場所,留置針口径,救急救命士経験年数,年間静脈路確保経験回数が静脈路確保成功に影響を与えていた。また,救急救命士経験年数3年以下と比較して4年以上,年間経験回数14回以下と比較して15回以上の成功率が有意に高かった。結論:本研究から救急救命士経験年数と年間静脈路確保経験回数が病院前救護における救急救命士の静脈路確保成功に影響していると明らかになった。また,今回の研究内容が当消防本部と同規模で病院研修カリキュラムの再構築を考えておられる方々の一助になれば幸いである。