著者
森 進一郎 清水 公治
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

目的;顎関節周囲の血管、特に血行動態に関して十分に解明されていないことから、日常の症例より本研究のMRI画像診断を行うため顎関節撮像に適したシーケンスを考慮、検討した。方法 装置、島津製作所1.5テスラ超伝導MRI装置、両側顎関節専用コイル、円形サーフェイスコイルを使用した。1)2D/TOF法による血管描出能の検討(TR/TR/FLIP=56/15/18°)2)造影剤使用による3D/TOF法による血管の描出能の検討(TO/FLIP=10/4.9/15°)3)関節周囲静脈叢の造影ダイナミック特性の検討(TR/TR/FLIP=56/15/18°)した。結果は;1)の項は、顎関節症の自覚症状のほとんど無いもの(本来健常者であるボランティアを予定していたが学内倫理委員会の結論が下りないため今後に持ち越す)で検討した結果、顎関節周囲の主要血管である顎動脈の上壁よりおこる後深側頭動脈、中硬膜動脈、顔面横動脈、顎動脈、浅側頭動脈、中側頭動脈などの描出は可能であったが、顎関節へ至る主要な静脈の詳細な血管抽出は困難であった。2)項における変形性顎関節症に至る過程を病期分類した3期および4期の症例を造影剤使用時において3D/TOF法で検索したところ、造影前の画像との差分画像を作成することによって顎関節静脈叢、翼突筋静脈叢などを含む詳細な血管の描出が可能であった。3)の項による造影ダイナミック撮像では顎関節静脈叢において、血流の流入・流出の血行動態の個体間における差を得ることが可能になった。まとめ;造影3D/TOF撮像では、顎関節周囲の血管構造をより詳細に観察することが可能となり、造影ダイナミック撮像では、各症例により静脈叢の血流の流入・流出特性の差が得られた。今後、多くの症例を積み重ねることにより顎関節症例の形態別特異性が得られる可能性が示唆された。