著者
永嶋 哲也
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

(1) 恋愛が12世紀の発明だと言われる場合に、それは「恋愛感情の発明」のことを意味せず、恋愛観の文化的転換のことを意味していることを論じ論文として公開した。つまり恋愛に対して神聖視するという受け取り方が生じたということ意味である。(2) アミキティア(amicitia)に関する古代哲学思想を中世の人びとがどのように受け入れたか調べるために、アベラールとエロイーズの往復書簡を検討し、成果を学会発表の形で公開した。(3) ダンテ『神曲』とペトラルカ『わが秘密』を題材に、恋愛信仰とキリスト教信仰とが両立し、また同時に対立もしていたということを明らかにし、論文という形で公開した。
著者
玉置 幸雄
出版者
福岡歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、自己組織化マップ(SOM)を用い、単一のノルムに依存しない新しい矯正診断システムの構築を目的とした。方法として、矯正治療後の成人女性109名を対象に、側面セファログラムを資料とし、硬組織19個の計測点の座標値から入力データを作成し、4×4個の計算ユニットを持つSOMで反復学習を行った。1万回の学習後に各ユニットの情報を視覚化したところ、下顎の前後・垂直的位置、上下顎切歯の前後的位置に違いがみられ、特徴の異なる16パターンが視覚化された。これらの硬組織側貌のバーチャルパターンをもとに、初診時の分類を行えることが示唆された。
著者
谷口 省吾 冨永 晋二
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

還元作用の強い輸液剤を投与することで、血液の酸化還元レベルを還元状態にして手術侵襲やショックなどの生体侵襲時に起こる活性酸素による酸素ストレスを防御して、生体の恒常性を保つことが可能かを検討した。1)種々の輸液剤(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、フィジオ140、生理食塩水、フィジオ70、EL#3)の酸化還元電位を測定したが、輸液剤の種類により異なる値を示した。還元剤としてはアスコルビン酸およびアルカリイオン水を添加し、アルカリイオン水の生成はイオン専科LB-161、酸化還元電位の測定はpH/ION Meter F-23にて行った。アルカリイオン水やアスコルビン酸添加により輸液剤の酸化還元電位を低下させることができた。2)血液の酸化還元電位を測定し、ある一定の範囲内にあることが示された。また、アルカリイオン水やアスコルビン酸添加により血液の酸化還元電位を低下させることができた。3)手術侵襲や重症ショックなどの生体侵襲時の血液の酸化還元電位を測定し、手術侵襲時には大きな変動は認められなかったが、重症ショック時には酸化還元電位の有意な上昇が認められた。4)酸化還元電位の異なる輸液剤(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、フィジオ140)を手術侵襲や重症ショック時に投与し、還元作用の強い輸液剤の投与により血液の酸化還元電位を減少させることができた。この時、代謝性アシドーシスや高乳酸血症も改善傾向が認められた。結論として、輸液剤の酸化還元電位を調節可能であり、この輸液剤を投与して血液の酸化還元電位を調節することが可能であることがわかり、生体侵襲時の酸化還元電位の上昇を防ぎ酸化ストレスを減少させることができる可能性か示唆された。
著者
谷口 奈央 廣藤 卓雄 中野 善夫
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

喫煙は、タバコのタールの臭いの他に、喫煙によって引き起こされる唾液分泌減少、舌苔付着促進、歯周疾患などにより、口臭に関係すると考えられる。口臭は主に舌苔に棲息する細菌によるアミノ酸代謝過程で発生し、舌苔はタバコの煙に直接曝露されるため、喫煙により舌苔細菌叢が受ける影響も口臭に関係すると推測される。本研究では、喫煙が唾液と舌苔の細菌叢に与える影響を、臨床的に健康な口腔環境を持つ若者を対象として調べた。福岡歯科大学口腔歯学部6年生50名(喫煙18名、非喫煙32名)を対象に唾液と舌苔を採取し、サンプルより抽出した細菌DNAから16S rRNA遺伝子をPCRによって増幅し、高速シーケンス解析法を用いて細菌叢解析をおこなった。その結果、菌叢の多様性解析では喫煙群と非喫煙群との間に有意な違いはみられなかった。一方、属レベルで比較解析をおこなったところ、喫煙群ではDialister属、Atopobium属など、口腔内の病的状態と関係する細菌が高い割合でみられた。ブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)との相関分析では、Selenomonas属、Bifidobacterium属が正の相関を示した。Selenomoas属は歯周炎など病的状態で多く分離される運動性桿菌である。Bifidobacterium属はタバコの主流煙が酸性であることから酸性環境下に強い菌の割合が多くなった可能性が示唆される。本研究で得た成果を国内の複数の学会で発表した。また、論文執筆ために過去の喫煙と口腔細菌叢に関する研究報告を収集したものを総説にまとめ投稿した。
著者
松浦 正朗 城戸 寛史 山本 勝己 加倉 加恵
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

顔面欠損を有する患者にどのような他者が見て自然と感じるかを調べるために8種類のエピテーゼの装着を想定した画像をコンピュータで制作しアンケート調査を行った。その結果、静止したエピテーゼよりも健側と同調してまばたきするエピテーゼがより自然に感じることが解明された。次いで実際に健側と同調してまばたきをする装置を試作した。1つは赤外線照射でまばたきを探知する方法、もう1つはまばたきにより細いワイヤーを振動させ、それを電流に変換する方法である。両方法とも正確にまばたきを探知でき、小型の動力部も製作できた。今後、臨床への応用が可能な段階にすることができた。
著者
大谷 崇仁
出版者
福岡歯科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

平成31年度は平成30年度までに明らかにした細胞・分子レベルでの高濃度GluOCによる脂肪細胞の細胞死(ネクロトーシス)調節をマウス個体で再現可能かというテーマに挑戦する予定であったが、分子レベルでの思わぬ発見もあり、平成30年度に引き続き、高濃度GluOCが脂肪細胞に与える影響について解析を行った。明らかになった点は大きく2つである。1つ目はGluOCが脂肪分解に大きな役割を果たしているという点である。GluOCはその受容体であるGPRC6Aに結合することで、cAMP-PKA-ERK-CREBシグナルカスケードを活性化させ、脂肪分解の律速酵素として知られるATGL(adipose triglyceride lipase)の発現量を亢進させることは以前明らかにしたが、さらにその他の脂肪分解関連酵素であるペリリピンやHSL(hormone sensitive lipase)のリン酸化を亢進させ、脂肪分解を促進させることを明らかにした。2つ目は高濃度GluOCが脂肪細胞の細胞接着を調節しているという点である。脂肪細胞の細胞膜上には接着分子の1つであるACAM(adipocyte adhesion molecule)という分子が発現しており、これらはhomophilicに脂肪細胞間の接着を調節するのと同時に、脂肪細胞の大きさを調節することが知られている。高濃度GluOCはこのACAMの細胞膜上の発現を亢進させることが分かった。以上の2点から、GluOCは糖代謝のみならず、脂質代謝においても重要な役割を果たし、かつ脂肪細胞間の細胞接着を亢進させることで、脂肪細胞に肥大化しにくい性質を付与する可能性が示唆されたことは、今後の研究の新展開として重要な1年となったと考える。
著者
梅井 利彦
出版者
福岡歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

白血病の治療は数種類の抗腫瘍剤を組み合わせた多剤併用療法が主体である。しかしながらこれらの抗腫瘍剤は副作用が強力で、しばしば治療を中断しなければならないこともあるほどである。アンチセンス法は癌特異的な抗腫瘍効果と分化誘導効果が期待できるため、今後の発展が望まれる治療法である。今回、まず癌遺伝子のうちc-mycに対するアンチセンスオリゴマー(5′d(AAC-GTTGAGGGGCAT)3′)を合成した。さらにコントロールとして(5′d(TTGGGATAA-CACTTA)3′の2種類のオリゴマーを合成した。これらを培養中の白血病細胞株(HL-60)に作用させ、その効果を見た。c-mycがコードしているp65蛋白の合成をウェスタンブロッティング法にて確認したところ、コントロールオリゴマーでは蛋白合成に何らの作用も及ぼさなかったが、アンチセンスオリゴマーではp65蛋白の合成低下が見られた。アンチセンスオリゴマーの濃度が10muMのときおおよそp65蛋白合成が半減した。一方、アンチセンスオリゴマー存在下でのHL-60細胞の増殖は濃度依存的に抑制され、10muMのアンチセンスオリゴマー存在下で増殖も約50%抑制された。これらの増殖抑制効果は、コントロールオリゴマーでは見られなかった。このように、アンチセンスオリゴマーは白血病細胞の増殖を抑制することがわかった。今回、実際の白血病患者より得られた癌細胞を用いて、アンチセンス遺伝子の効果を検討するまでは至らなかったが、急性、慢性骨髄性白血病などの遺伝子異常が見られる細胞や、成人T細胞性白血病、多発性骨髄腫などその増殖に関与するサイトカインが知られている細胞に対しては有効な結果が期待できると思われる。
著者
福島 忠男 井上 勇介 早川 徹 岡畑 恵雄 土井 豊 武田 昭二 川口 稔 大野 純 豊田 美香
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

サケ由来DNAとポリカチオン(キトサン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジン、プロタミン)からDNA/ポリカチオン複合体を合成し、インジェクション型スキャフォールド材の素材としての有効性を検討した。DNA/キトサンおよびDNA/プロタミン複合体が流動性に優れていた。また、炭酸アパタイトを添加しても流動性があり、骨形成能も示したのでインジェクション型スキャフォールド材の素材として有望と考えられた。
著者
加藤 智崇
出版者
福岡歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、歯科治療の中断を防ぐため、中断患者の背景を解析することを目的とした。協力歯科医院の中断患者に電話インタビューを行い、93名中5名から回答を得て質的に解析した。この結果を用いて患者背景を調査するアンケート項目を作成した。アンケート調査はweb上で中断患者と歯科を定期受診する患者にアンケート調査を実施した。結果、中断患者は、健康意識が低く、歯科に対してネガティブな感情を持つ者が多い可能性が示唆された。
著者
森 進一郎 清水 公治
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

目的;顎関節周囲の血管、特に血行動態に関して十分に解明されていないことから、日常の症例より本研究のMRI画像診断を行うため顎関節撮像に適したシーケンスを考慮、検討した。方法 装置、島津製作所1.5テスラ超伝導MRI装置、両側顎関節専用コイル、円形サーフェイスコイルを使用した。1)2D/TOF法による血管描出能の検討(TR/TR/FLIP=56/15/18°)2)造影剤使用による3D/TOF法による血管の描出能の検討(TO/FLIP=10/4.9/15°)3)関節周囲静脈叢の造影ダイナミック特性の検討(TR/TR/FLIP=56/15/18°)した。結果は;1)の項は、顎関節症の自覚症状のほとんど無いもの(本来健常者であるボランティアを予定していたが学内倫理委員会の結論が下りないため今後に持ち越す)で検討した結果、顎関節周囲の主要血管である顎動脈の上壁よりおこる後深側頭動脈、中硬膜動脈、顔面横動脈、顎動脈、浅側頭動脈、中側頭動脈などの描出は可能であったが、顎関節へ至る主要な静脈の詳細な血管抽出は困難であった。2)項における変形性顎関節症に至る過程を病期分類した3期および4期の症例を造影剤使用時において3D/TOF法で検索したところ、造影前の画像との差分画像を作成することによって顎関節静脈叢、翼突筋静脈叢などを含む詳細な血管の描出が可能であった。3)の項による造影ダイナミック撮像では顎関節静脈叢において、血流の流入・流出の血行動態の個体間における差を得ることが可能になった。まとめ;造影3D/TOF撮像では、顎関節周囲の血管構造をより詳細に観察することが可能となり、造影ダイナミック撮像では、各症例により静脈叢の血流の流入・流出特性の差が得られた。今後、多くの症例を積み重ねることにより顎関節症例の形態別特異性が得られる可能性が示唆された。
著者
廣藤 卓雄 米田 雅裕 内藤 徹 武内 哲二 山田 和彦 鈴木 奈央 松葉 健一 吉兼 透
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高齢者肺炎の多くは誤嚥性と言われ、予防には口腔ケアが効果的とされている。施設における誤嚥性肺炎の発症につき、その頻度、介護度との関係、発症の時期を検討し、口腔ケアとの関係や、口腔内細菌の誤嚥性肺炎への関与の一部を明らかにした。また、同様の方法を用いて、高齢者・障害者の方に多く認められる口臭との関連性についても心理的、生活習慣的側面を踏まえて細菌学的に解析した。
著者
来海 慶一郎
出版者
福岡歯科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

窒素含有ビスホスホネート製剤(NBP)関連顎骨壊死(BRONJ)の発症にNBPよる破骨細胞分化や生存の抑制作用が一要因になっているのではないかと推測し、マウス破骨細胞分化過程に対するゾレドロン酸とプレニル化促進物質GGOHの効果を検討した。ゾレドロン酸は分化関連分子TRAP、細胞融合分子DC-STAMP及びOC-STAMPの発現を抑制し、破骨細胞分化を阻害し、この作用はGGOHの存在下で回復した。以上より、NBPは破骨細胞の融合・形成を抑制し、プレニル化促進物質はNBPによる分化阻害を部分的に回復させると考えられた。
著者
泉 利雄 阿南 壽 松家 茂樹
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

生体内で骨形成を促進するSrは,骨粗鬆症の薬として使われている.骨補填材骨と一体化するため骨補填材として使われるガラスにSrを添加して作製した試作ガラス粒子は,骨再生を促進する可能性があることが示唆された.ガラスから骨組織内へSrが徐放されるためと考えられる.試作ガラス粒子を硬化させ骨内欠損部を埋めるために 酸と練和して硬化体を作製した.γ‐ポリグルタミン酸を使用した場合は骨欠損部から硬化体が流出しやすいが,骨形成を促進する可能性が示唆された.
著者
佐藤 博信 松浦 尚志 都築 尊 松永 興昌 片渕 三千綱 生山 隆
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)の下顎骨が骨粗鬆症様の骨の性質を有する可能性を組織学的および生化学的に検証した.コントロールマウス(SAMR1)と比べると,SAMP6の下顎骨は骨形態計測学的に骨量が少なく,骨基質の透過型電子顕微鏡像で明らかなコラーゲン線維の狭小化が認められた.両マウスの下顎骨の骨基質の生化学分析によると,その大部分はI型コラーゲンであった.SAMP6の下顎骨は,SAMR1に比べ,基質中のコラーゲン量が少なく,またコラーゲンの翻訳後修飾の一つであるハイドロキシリシンの量が多く認められた.リシンのハイドロキシル化が亢進するとコラーゲン線維の狭小化が起こることが報告されており,SAMP6の下顎骨のコラーゲンに認められるコラーゲン線維の狭小化はおそらくリシンのハイドロキシル化の亢進が関与しているものと推察された.リシンのハイドロキシル化の亢進は,同マウスおよび骨粗鬆症患者の大腿骨でも認められることが報告されており,骨粗霧症の骨質に大きく関与するコラーゲン性状に,コラーゲン翻訳後修飾の一つであるリシンのハイドロキシル化が寄与している可能性が示唆された.本研究の結果から,老年性骨粗鬆症モデルマウスの下顎骨は骨量的にも骨質的にも骨粗鬆症様の性質を有していることが明らかとなった.骨粗鬆症患者の顎骨も量的のみならず質的に低下している可能性が考えられ,今後の臨床研究により骨粗鬆症患者での傾向を明らかにしていくとともに,ゲノム解析による骨質診断法の確立とそれに対応した歯科治療の開発へと発展させていける可能性が見出せた.