- 著者
-
清水 将文
- 出版者
- 三重大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究では、省農薬使用の野菜セル成型苗生産を目指し、植物内生放線菌を利用したセル成型苗病害の新規生物防除技術の開発を目的としている。キャベツやブロッコリのセル成型苗に発生する黒すす病が近年深刻な問題となっている。そこで、本病に防除活性を示す内生放線菌の探索を行い、昨年度に有望3菌株(MBCN43-1株、MBCN56-1株、MBCY58-1株)を選抜した。本年度も引き続き探索試験を行った結果、これら3菌株よりも強力な菌株(MBCN152-1株)を得ることに成功した。MBCN152-1株の生化学的性状や形態などを解析し、Streptomyces sp.と同定した。キャベツセル成型苗黒すす病の一次伝染源である汚染種子に対するMBCN152-1株の防除効果を検討するため、本菌株の胞子懸濁液を5×10^5、5×10^6、5×10^7cfu/g(育苗土)の割合で混和した育苗土に汚染種子を播種し、2週間育成した。その結果、放線菌無処理区では約45%の苗が発病したが、MBCN152-1株処理区の発病苗率は5%未満であった。特に、5×10^7cfu/g処理区ではほぼ完全に発病が抑制され、極めて高い防除効果が得られることを明らかにした。つぎに、発病苗からの二次伝染を想定し、MBCN152-1株(5×10^7cfu/g)処理育苗土で育成したセル成型苗に黒すす病菌胞子を噴霧接種して温室内で育成したところ、苗枯死が無処理区と比較して約84%抑制された。これらの結果から、MBCN152-1株を最終候補株として選抜した。また、本菌株の凍結乾燥胞子を含有する粉状生菌剤の試作に成功し、最低3ヶ月間以上は常温で安定的に保存できることも確認した。現在、本菌株をより安定的且つ低コストで製剤化する技術の検討や防除機構の解析を進めている。本研究で得られた成果を基に特許を出願(特願2007-59639)した。