著者
見田 忠幸 小野 正博 清水 恒良
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第26回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2010 (Released:2010-11-02)

【はじめに】左膝蓋骨縦骨折の保存療法を経験した。外側縁部の骨折は血行が乏しく骨癒合が得にくいため、理学療法を実施するにあたり考慮が必要であった。骨折部に対し注意を払い理学療法を実施した結果、良好な成績が得られたので若干の考察を加え報告する。<BR>【症例紹介】症例は80歳代の女性である。自宅にて転倒後、疼痛の訴えが有り当院にて左膝蓋骨骨折と診断されギプス固定となる。発症後、約2週ギプス固定、その後knee braceに変更され週2日、外来にて理学療法開始となる。<BR>【評価および理学療法】理学療法開始の時点で発症4週であり著明な浮腫は見られなかった。関節可動域は屈曲90°伸展-15°、徒手筋力検査は膝伸展3+、屈曲4であった。治療としては膝蓋骨の各rotationの動きを引き出し、外側広筋、腸脛靭帯をトランスバース方向へ滑走させ、膝蓋骨を把持しながら軽い収縮を促した。以上を中心に膝蓋骨に離開ストレスが加わらない様に注意を払いながら徐々に可動域を獲得した。発症8週で屈曲140°伸展0°膝関節屈曲時に膝前面内側部に疼痛がみられた。疼痛の要因は内側縁部骨折線の離開ストレスを考慮しmedial infra patella tissue へのアプローチが十分ではなかったと推察し内側膝蓋大腿靭帯、内側膝蓋支帯に対しストレッチング、滑走性を促した。12週で正座可能となり理学療法終了となる。<BR>【考察】症例は内・外側縁部縦骨折である。富士川は外側縁部縦骨折の場合、血行がきわめて乏しく骨癒合が得にくいと示唆している。つまり固定期間、4週以降も愛護的に可動域を改善して行く慎重さが求められる。外側骨折部は外側広筋斜走線維の付着部であり、外側広筋のhyper traction(過剰牽引)が骨折部の離開を誘発する。そして、外側広筋斜走線維は腸脛靭帯の裏面より起始しており腸脛靭帯を含めた柔軟性改善が重要であると考えられる。外側に比較すると内側は血行が豊富でありtraction方向に働く軟部組織も少ないため積極的に進めた。以上を踏まえアプローチした結果、正座獲得に至った。<BR>