著者
小野 正博
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

近年,筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis; ALS)患者脳においてTDP-43タンパク質(細胞核に局在するRNA結合タンパク質)が細胞質へ漏出し,異常に凝集・蓄積することが報告されている.したがって,ALSにおけるTDP-43タンパク質の異常蓄積は,ALSの病態解明および治療のための重要な標的分子と考えられる.本研究では,ALS患者脳内に発現するTDP-43凝集体を標的とした新規PET/SPECT用核医学イメージングプローブを開発し,その生体内での可視化を目的とする.
著者
見田 忠幸 小野 正博 清水 恒良
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第26回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2010 (Released:2010-11-02)

【はじめに】左膝蓋骨縦骨折の保存療法を経験した。外側縁部の骨折は血行が乏しく骨癒合が得にくいため、理学療法を実施するにあたり考慮が必要であった。骨折部に対し注意を払い理学療法を実施した結果、良好な成績が得られたので若干の考察を加え報告する。<BR>【症例紹介】症例は80歳代の女性である。自宅にて転倒後、疼痛の訴えが有り当院にて左膝蓋骨骨折と診断されギプス固定となる。発症後、約2週ギプス固定、その後knee braceに変更され週2日、外来にて理学療法開始となる。<BR>【評価および理学療法】理学療法開始の時点で発症4週であり著明な浮腫は見られなかった。関節可動域は屈曲90°伸展-15°、徒手筋力検査は膝伸展3+、屈曲4であった。治療としては膝蓋骨の各rotationの動きを引き出し、外側広筋、腸脛靭帯をトランスバース方向へ滑走させ、膝蓋骨を把持しながら軽い収縮を促した。以上を中心に膝蓋骨に離開ストレスが加わらない様に注意を払いながら徐々に可動域を獲得した。発症8週で屈曲140°伸展0°膝関節屈曲時に膝前面内側部に疼痛がみられた。疼痛の要因は内側縁部骨折線の離開ストレスを考慮しmedial infra patella tissue へのアプローチが十分ではなかったと推察し内側膝蓋大腿靭帯、内側膝蓋支帯に対しストレッチング、滑走性を促した。12週で正座可能となり理学療法終了となる。<BR>【考察】症例は内・外側縁部縦骨折である。富士川は外側縁部縦骨折の場合、血行がきわめて乏しく骨癒合が得にくいと示唆している。つまり固定期間、4週以降も愛護的に可動域を改善して行く慎重さが求められる。外側骨折部は外側広筋斜走線維の付着部であり、外側広筋のhyper traction(過剰牽引)が骨折部の離開を誘発する。そして、外側広筋斜走線維は腸脛靭帯の裏面より起始しており腸脛靭帯を含めた柔軟性改善が重要であると考えられる。外側に比較すると内側は血行が豊富でありtraction方向に働く軟部組織も少ないため積極的に進めた。以上を踏まえアプローチした結果、正座獲得に至った。<BR>
著者
北垣 忠温 鈴木 登志郎 小池 嘉秀 小野 正博 白川 清美 永田 充宏 小西 良士
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.325-343, 1996-07-05
参考文献数
13
被引用文献数
2

MC903の安全性を検討するため,0,0.4,2および10 μg/kg/dayをSlc:SD系雌雄ラットの頸背部皮下に26週間投与した。さらに,2および10 μg/kg/day群について,5週間の回復試験を実施し,以下の結果を得た。1. 死亡例は試験期間を通して,各群の雌雄に認めなかった。一般状態では10 μg/kg群の雄に眼球表面の一部白濁の発生頻度が増加した。2. 体重および摂餌量は,試験期間を通して,雌雄とも対照群とほぼ同様に推移した。10 μg/kg群の雌雄に,摂水量の増加ないし増加傾向を認めた。3. 投与期間終了時に,眼科学的検査で,10 μg/kg群の雌雄に角膜表面の一部混濁の発生頻度が増加した。尿検査で,2 μg/kg群以上の雄に尿中カルシウム排泄量の増加,10 μg/kg群の雄に尿中ナトリウム・クロライド・無機リン排泄量の増加,雌に尿量の減少,雌雄にpHの低下を認めた。血液化学的検査で,2 μg/kg群の雄および10 μg/kg群の雌雄に血中カルシウム濃度の増加,10 μg/kg群の雄に血中ALP活性の上昇を認めた。器官重量で,2 μg/kg群以上の雄に腎臓絶対重量・相対重量の増加,10 μg/kg群の雌雄に副腎絶対重量・相対重量の増加を認めた。病理組織学的検査で,2 μg/kg群以上の雄に角膜・腎臓の鉱質化の発生頻度の増加を認めた。電子顕微鏡検査で,10 μg/kg群の雌雄の腎臓に遠位尿細管上皮細胞の滑面小胞体を主とした小胞体の拡張を認めた。4. 5週間の休薬により,眼球表面の一部白濁,角膜表面の一部混濁および角膜・腎臓の鉱質化は回復しなかった。その他の変化は回復または軽減し,可逆性の変化であった。5. 以上の結果,本試験条件下におけるMC903の無毒性量は,雌雄とも0.4 μg/kg/dayと推定した。