著者
渕之上 康元
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.66, pp.15-39, 1987

1埼玉県茶業試験場で,品種園の中の100品種・系統(日本種,準中国種,準アッサム種など)を供試して,4年生時(1974)から14年生時(1984)までの11ヵ年間にわたって,圃場耐寒性を調査し,同時に冬季の気象条件などとの関係を調べたところ,耐寒性茶樹育種のための多くの知見を得ることができた。<BR>2調査方法の概要は下記のとおりである。<BR>(1)圃場耐寒性は,関東茶産地での主要な寒害(赤枯れと青枯れ)に対する抵抗性で,いずれも越冬圃場(毎年3月上旬に)での被害の程度を肉眼観察により1(軽微)~9(甚大)に判定区分した。<BR>(2)気象観測は,茶業試験場内の百葉箱によるもので,11月第3半旬~3月第1半旬の最低気温,降水量,降雪量,地温,凍結期間などである。<BR>3得られた成果の要約は下記のとおりである。<BR>(1)赤枯れ被害は,幼・成木期に関係なく何時でも発生がみられるが,青枯れ被害は,特異な異常気象年を除き幼木期程被害が大きい。<BR>(2)主要な32品種の11ヵ年のデータについて分散分析を行ったところ,両被害共年次間及び品種間に顕著な有意差を認めた。<BR>(3)赤枯れ被害でも年により被害程度に多少の差がみられるが,青枯れ被害は,茶樹の幼木期に生じやすいとはいえ,毎年発生するとは限らず,とくに成木園になってからは,異常気象年を除き,被害軽微の年が多かった。<BR>(4)被害度の反復力(遺伝力)を計算し,耐赤枯れ,青枯れ性の検定に適した年の有無について検索したところ,耐赤枯れ性では,一般に被害度が特異的でしかも品種の変動係数の小さい年を除いて,平均被害度が4.0~5.0程度で品種の変動係数の比較的高い年(平均0.3~0.4位)を選ぶこと,また,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象を除き,幼木期を対象として適度の被害度(平均3.0~4.0位)と品種の変動係数の大きい年(0.6~0.8程度)をそれぞれ選んで,これを検定に適した年とするのが良いように思われた。<BR>(5)これを冬季気象条件との関係において検討したところ,耐赤枯れ性検定では,暖冬年や寒の戻り年などの特異な気象年を除き,冬期の日最低気温積算値が-320℃~-460℃位の当地方でも比較的寒冷な年で,しかも1976年のように前年の12月下旬から厳寒期にかけて半旬別平均最低気温がほぼ直線的に低下していた年が最も検定に適していた。また一方,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象年を除き,茶樹の幼木期に相当した年次の中で,茶樹が吸水低下を来たすと言われている土壌凍結~地温3~4℃以下の継続日数の長い寒冷な年で,しかも無降水継続日数が50日以上にも達する年が適していた。<BR>(6)検定に適した年の被害度の分散分析の結果をもとに主要32品種の圃場耐寒性の階級分けを行い,耐赤枯れ性を強~弱の5群に,耐青枯れ性を強~甚弱の6群に群別した。<BR>(7)今後,気候遷移期の特徴といわれる異常気象年(冬季の)に対応できる品種育成の基礎資料を得る目的で,特異な気象条件下での品種の耐赤枯れ,青枯れ性の変動について,やや強以上の品種(検定に適した年のもとでの)について調べた。その結果,まず耐赤枯れ性では,寒の戻り年でも比較的その低下をみなかった品種にやまとみどり,たまみどり,こまかげ,さみどりなどが,また逆に著しく低下をみたものにおぐらみどりがみられた。また一方,耐青枯れ性についても同様に検討してみると,1984年の異常気象年でもこまかげ,さみどり,安化県種の3品種・系統のみは被害が極めて軽微(被害度1.0)で特異的であり,あさひ,さやまかおり,やまとみどりなども比較的耐青枯れ性の低下が少なかった。しかし,一方おぐらみどり.他数品種に著しく耐青枯れ性の低下するものを認めた。なお,検定に適した年に平均的被害度が4.0であったやぶきたが異常気象年に8.0まで低下していたことは注目された。<BR>(8)赤枯れ,青枯れ被害と一番茶収量との相関関係は,赤枯れでは被害の著しい年にのみ負の相関関係を認めたが,一方,青枯れでは被害のあったすべての年で負の相関関係が認められた。<BR>(9)最終的に,特異な気象条件下での各品種の変動も含めて,わが国主要46品種の耐寒性の階級分けを6~7段階に行った。そしてこれによれば,まず耐赤枯れ性では日本種が強~弱,準中国種がやや強~やや弱,準アッサム種がやや強~甚弱に,また一方,耐青枯れ性では日本種と準中国種が甚強~甚弱,準アッサム種がやや強~甚弱にそれぞれ変異していた。<BR>なお,これを個々の品種でみれば,とくにこまかげ,さみどり,さやまかおり,あさひ,やまとみどりの5品種が耐赤枯れ,青枯れ性共に他の品種よりも上位にランク付けされており,将来の超耐寒性品種育成のための素材として注目された。
著者
渕之上 康元
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.66, pp.15-39, 1987-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2

1埼玉県茶業試験場で,品種園の中の100品種・系統(日本種,準中国種,準アッサム種など)を供試して,4年生時(1974)から14年生時(1984)までの11ヵ年間にわたって,圃場耐寒性を調査し,同時に冬季の気象条件などとの関係を調べたところ,耐寒性茶樹育種のための多くの知見を得ることができた。2調査方法の概要は下記のとおりである。(1)圃場耐寒性は,関東茶産地での主要な寒害(赤枯れと青枯れ)に対する抵抗性で,いずれも越冬圃場(毎年3月上旬に)での被害の程度を肉眼観察により1(軽微)~9(甚大)に判定区分した。(2)気象観測は,茶業試験場内の百葉箱によるもので,11月第3半旬~3月第1半旬の最低気温,降水量,降雪量,地温,凍結期間などである。3得られた成果の要約は下記のとおりである。(1)赤枯れ被害は,幼・成木期に関係なく何時でも発生がみられるが,青枯れ被害は,特異な異常気象年を除き幼木期程被害が大きい。(2)主要な32品種の11ヵ年のデータについて分散分析を行ったところ,両被害共年次間及び品種間に顕著な有意差を認めた。(3)赤枯れ被害でも年により被害程度に多少の差がみられるが,青枯れ被害は,茶樹の幼木期に生じやすいとはいえ,毎年発生するとは限らず,とくに成木園になってからは,異常気象年を除き,被害軽微の年が多かった。(4)被害度の反復力(遺伝力)を計算し,耐赤枯れ,青枯れ性の検定に適した年の有無について検索したところ,耐赤枯れ性では,一般に被害度が特異的でしかも品種の変動係数の小さい年を除いて,平均被害度が4.0~5.0程度で品種の変動係数の比較的高い年(平均0.3~0.4位)を選ぶこと,また,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象を除き,幼木期を対象として適度の被害度(平均3.0~4.0位)と品種の変動係数の大きい年(0.6~0.8程度)をそれぞれ選んで,これを検定に適した年とするのが良いように思われた。(5)これを冬季気象条件との関係において検討したところ,耐赤枯れ性検定では,暖冬年や寒の戻り年などの特異な気象年を除き,冬期の日最低気温積算値が-320℃~-460℃位の当地方でも比較的寒冷な年で,しかも1976年のように前年の12月下旬から厳寒期にかけて半旬別平均最低気温がほぼ直線的に低下していた年が最も検定に適していた。また一方,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象年を除き,茶樹の幼木期に相当した年次の中で,茶樹が吸水低下を来たすと言われている土壌凍結~地温3~4℃以下の継続日数の長い寒冷な年で,しかも無降水継続日数が50日以上にも達する年が適していた。(6)検定に適した年の被害度の分散分析の結果をもとに主要32品種の圃場耐寒性の階級分けを行い,耐赤枯れ性を強~弱の5群に,耐青枯れ性を強~甚弱の6群に群別した。(7)今後,気候遷移期の特徴といわれる異常気象年(冬季の)に対応できる品種育成の基礎資料を得る目的で,特異な気象条件下での品種の耐赤枯れ,青枯れ性の変動について,やや強以上の品種(検定に適した年のもとでの)について調べた。その結果,まず耐赤枯れ性では,寒の戻り年でも比較的その低下をみなかった品種にやまとみどり,たまみどり,こまかげ,さみどりなどが,また逆に著しく低下をみたものにおぐらみどりがみられた。また一方,耐青枯れ性についても同様に検討してみると,1984年の異常気象年でもこまかげ,さみどり,安化県種の3品種・系統のみは被害が極めて軽微(被害度1.0)で特異的であり,あさひ,さやまかおり,やまとみどりなども比較的耐青枯れ性の低下が少なかった。しかし,一方おぐらみどり.他数品種に著しく耐青枯れ性の低下するものを認めた。なお,検定に適した年に平均的被害度が4.0であったやぶきたが異常気象年に8.0まで低下していたことは注目された。(8)赤枯れ,青枯れ被害と一番茶収量との相関関係は,赤枯れでは被害の著しい年にのみ負の相関関係を認めたが,一方,青枯れでは被害のあったすべての年で負の相関関係が認められた。(9)最終的に,特異な気象条件下での各品種の変動も含めて,わが国主要46品種の耐寒性の階級分けを6~7段階に行った。そしてこれによれば,まず耐赤枯れ性では日本種が強~弱,準中国種がやや強~やや弱,準アッサム種がやや強~甚弱に,また一方,耐青枯れ性では日本種と準中国種が甚強~甚弱,準アッサム種がやや強~甚弱にそれぞれ変異していた。なお,これを個々の品種でみれば,とくにこまかげ,さみどり,さやまかおり,あさひ,やまとみどりの5品種が耐赤枯れ,青枯れ性共に他の品種よりも上位にランク付けされており,将来の超耐寒性品種育成のための素材として注目された。