著者
堀江 秀樹 氏原 ともみ 木幡 勝則
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.91, pp.29-33, 2001-07-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7
被引用文献数
8 4 8

キャピラリー電気泳動法を用いて,茶葉中の主要カテキン類,テアニン,カフェインの茶浸出液への溶出特性について解析した。主要カテキン類の中でも,エステル型カテキン類は遊離型カテキン類に比べて溶出されがたいこと,カフェインは低温では時間をかければ溶出され,また高温では極めて溶出されやすいことが明らかになった。
著者
坂本 裕
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.19, pp.115-117, 1962-11-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
2

サザンカおよびツバキのポリフェノールのクロマトグラムから考えて,茶葉のポリフェノールの特徴であるカテキン類のうち,共通に存在するのはl-エピカテキンおよび没食子酸のみであって,その他のカテキン類,特にエステル型の存在は認められない,さらにサザンカとッバキのポリフェノールの構成はきわめて似ているものの,茶葉のそれとはかなり異なっている。フラボ'ノイドはサザンカについてのみ同定を行なったが,茶葉とほぼ似た構成をもっていることが判明した。またカフェインは従来は茶のみに存在していて,'ツバキ,サザンカには存在しないように考えられていたが,今回の研究で両者ともにカフェインが存在することを確認した。
著者
松本 武夫 淵之上 康元 米丸 忠 田中 万吉
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.19, pp.6-9, 1962-11-15 (Released:2009-07-31)
被引用文献数
1 2

"Oku-Musahi" is a new variety for green tea. This was developed by the Tea Breeding Laboratory, M. A. F.-designated, Saitama-Ken Tea Exp. Stat., and the registration of this variety was made in 1962. "Oku-Musashi" was selected from the hybrids between "Saya-mamidori" and "Yamatomidori".The superior points of this variety are as follows;1. It grows vigorusly, and produces high yield and, especially, is cold resistant. It is, adapted to the northern zone of green tea production in Japan as Saitama Ken.2. It grows leaves of superior qualities for green tea. And, therefore, the tea has good characters, especiaially, in aroma and taste.3. "Oku-Musashi" is a late variety, that is, the plucking time is a few days later than "Sayamamidori" and 7 to 10 days later than "Yabukita, " both are main varietys cultivated in Saitama district. Therefore, the tea growers can control the labour of tea leaf plucking.
著者
坂本 彬 中川 致之 杉山 弘成 堀江 秀樹
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.94, pp.45-55, 2002-12-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

1. 煎茶の標準的な入れ方に近い湯温50℃,60℃,70℃,90℃(遊離アミノ酸類は90℃を除く),浸出時間は1煎目が60秒,2煎目,3煎目が10秒間の条件で,主要カテキン類4種,カフェイン,主要遊離アミノ酸類6種がどのように溶出するかを調べた。(1)カテキン類,カフェインは,ともに温度の上昇に伴って溶出量が増加した。カテキン類のうちで遊離型カテキン類は比較的溶出しやすく,エステル型カテキン類は溶出が遅かった。90℃3煎目で前者が90%以上溶出されたのに対し,後者は50%台であった。カフェインは遊離型カテキン類に近い溶出性を示した。(2)アミノ酸類はきわめて溶出されやすく,50~70℃の1煎目で半分近く溶出し,3煎目には,ほとんど100%溶出した。ただし, アルギニンは他のアミノ酸より溶出が遅い傾向にあった。2. 温度を変える入れ方,すなわち1煎目を5℃,10分,2煎目を50℃,1分,3煎目を95℃1分の条件で主要カテキン類4種,カフェイン,主要遊離アミノ酸類6種,ペクチン,カリウム,マグネシウム,カルシウム,リン酸がどのように溶出するかを調べた。(1)遊離型カテキン類は冷水でも比較的溶出しやすく,3煎目までで80~90%が溶出した。一方,エステル型カテキン類は低温では溶出されにくく,熱湯を用いた3煎目で急激に溶出したが,それでも50%程度であった。カフェインは低温でも1煎目で36%程度溶出し,熱湯を用いた3煎目までで84%に達した。(2)アミノ酸類は冷水でもよく溶出したが,アルギニンは他のアミノ酸類より溶出が遅かった。1煎目に冷水を使用する条件でも,アルギニンを除いて2煎目で70~80%が溶出した。(3)ペクチンは溶出しやすく,いずれの形態のものも煎を重ねるに従って段階的に溶出が減少した。(4)カリウムは溶出されやすく,3煎でほとんどが溶出した。マグネシウム,リン酸は煎を重ねるに従って溶出が減少した。ただし,カルシウムは1煎から3煎まで同程度の溶出量であり,溶出割合も3煎までで4%に満たなかった。(5)1煎液の濃厚な甘味,旨味にはアミノ酸類の濃度が高く,ペクチンを多く含むことが,また3煎液の強い苦味にはエステル型カテキン類の濃度の高いことが寄与していると推察される。
著者
堀江 秀樹 木幡 勝則
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.89, pp.23-27, 2000-08-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

シュウ酸は舌に残る不快味を示す。各種緑茶中のシュウ酸含量を調べたところ,玉露で1%以上,煎茶では0.9%程度,番茶・ほうじ茶ではそれ以下の値を示した。また荒茶を火入れ処理しても,処理前後でシュウ酸の含量は変化しなかった。シュウ酸は40℃程度の低温でも,浸出液中に溶出されやすかった。茶浸出液中のシュウ酸濃度が高ければシュウ酸味が強いとは必ずしもいえず,リン酸等他のイオンがシュウ酸味に影響するものと推察された。
著者
山西 貞 内田 温子 川島 洋子 藤波 大和 宮本 眞紀子
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.41, pp.48-53, 1974-06-20 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1

さやまみどりの煎茶製造には萎凋操作を加えて,独特の芳香を発揚することが行なわれている。この現象とさやまみどりの特殊香気の本質について研究し,次のことが明らかとなった。1)さやまみどりはやぶきたに比べ,リナロール,α-テルピネオ~ル等のモノテルペンアルコールは少ないが,甘い花香を有するネロリドールが著しく多い。2)さやまみどりには木のにおいをもつ1種の未知物質が存在するが,萎凋によりこれはエステル(菊またはセリ様の香)に変わる。3)インドールはさやまみどりに多く,これが多すぎると不快なにおいになる。萎凋により,インドールは減少する傾向があり,この処理により香りのバランスが好ましいものになると考えられる。4)酸の中,不快臭であるカプロン酸は萎凋によって著しく減少し,好ましい香りのエステルに変わる。
著者
後藤 哲久 堀江 秀樹 大関 由紀 増田 英昭 藁科 二郎
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.80, pp.23-28, 1994-12-28 (Released:2009-07-31)
参考文献数
11
被引用文献数
9 12

市販緑茶7茶種87点を集め,その一般化学成分として全窒素,全遊離アミノ酸,タンニン,カフェイン,中性デタージェント繊維(NDF),アスコルビン酸,また,個別遊離アミノ酸としてアスパラギン酸,アスパラギン,グルタミン酸,グルタミン,セリン,アルギニン,テアニンの含有量を測定した。全窒素,全遊離アミノ酸含有量は,玉露,抹茶が煎茶等と比較して多く,タンニンは逆に煎茶が多かった。煎茶,釜いり製玉緑茶,むし製玉緑茶の3茶種の間では,今回測定した6種類の主要化学成分の含有量に有意差は見られなかった。番茶,ほうじ茶の全窒素含有量は下級煎茶に近いものであったが,NDFはほうじ茶において極端に多かった。アルギニン,テアニンの含有量は同一茶種のクラス間で差が大きく,全窒素,全遊離アミノ酸とともに品質の指標として用いうる可能性が示された。
著者
古畑 哲 桑原 穆夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1960, no.15, pp.63-69, 1960-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

紅茶の製造工程で発酵時間の短いものと普通のもの2種類を調製し,これらをいずれも室温と冷温下に分けて1年間貯蔵し,内容成分ならびに品質の変化を検討した。その結果は次のようになつた。3ヵ月ごとに含水量・水色・pHの変化をみた。含水量は室温においた区の変動が大きかつた。水色はいずれも貯蔵期間が長くなるにつれ,濃度が濃くなる傾向を示したが,冷温区はその進み方が少なかつた。pHの変化ははつきりしたことはいえなかつた。6ヵ月ごとにタンニン・全窒素・可溶性窒素の変化をみたが,これについては明瞭な傾向は見出されなかつた。1年後の製品について調べた結果では,水色が貯蔵中に濃くなることについて,メラノイド色素の形成が考えられたので,蒸留水によるセロハン膜非透析部について,糖と窒素の含量をみたところ,糖は存在せず窒素がわずかながら存在していた。重合型タンニンは,90分―室温>45分―室温>45分―冷温区の順となり,水色濃度にほぼ一致した。没食子酸も重合型タンニンも同じ傾向を示した。カテキン類のペーパークロマトグラフィーによる検索では,フェノールの原線上に帯状のフラクションが認められ,これは酸化重合物と考えられた。品質審査では香気・水色・滋味の項目で,いずれも室温貯蔵が冷温貯蔵よりもすぐれていた。
著者
池ケ谷 賢次郎 シバスブラマニアム S. ペレラ M.B.A. アヤドゥライ S.
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.54, pp.23-31, 1981-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

スリランカの茶園土壌は,プレカンブリアン紀の各種結晶片岩に由来する残積,崩積,沖積に由来するポドソリック赤黄色土であった。茶園土壌のpHは未耕地土壌より低かった。未耕地土壌は茶園土壌より腐植含量が多かった。また,腐植含量は茶園,未耕地とも下層ほど少なかった。置換性のカルシウムとマグネシウム含量は,茶園土壌で極めて少なく,未耕地では明らかに少なかった。ポドソリック赤黄色土と腐植質土壌の腐植酸の示差吸光曲線を求めた。ポドソリック赤黄色土の腐植酸は日本の赤黄色土腐植酸よりもフェノール性水酸基の反応が小さかった。腐植質土壌の腐植酸は250mpにフェノール性水酸基の大きなピークがみられた。スリランカ茶園土壌では,硝酸化成がアンモニア化成より明らかに強かった。牛ふん施用(N12kg/10a)によりNO3-Nの生成が増加した。紅茶屑,モミガラを施用すると無施用区よりNO3-Nが減少し,NH4-Nが増加した。
著者
塘 二郎 淵之上 康元 淵之上 弘子
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1956, no.7, pp.14-20, 1956-04-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

実生繁殖を行うにあたり重要な問題である自家結実歩合がきわめて低いので,その原因を追求するため自家受精に関する研究を行い,併せて人為的処理による効果について検討を加え,大要次のごとき結果を得た。1.自家結実歩合は過去5年間の平均で2.2%を示し,他家の29.5%に比しきわめて低い。更に1顆中の種子数少く,自殖種子の発芽もく,実用的には自家不結実性と見なし得る。2.授粉後採種にいたるまで落顆は多い。その落顆実の性質を明らかにするため,落顆様相の異なる2品種を供試し,それらの自家・他家及び無授粉の落顆様相を講査するとともに,胚嚢の発育状況を追求したが,自家の落顆実は不受精によるものが多いのに比し,他家のそれは生理的落顆実が多い。3.自家柱頭上での花粉発芽勢及び花粉管伸長は他家柱頭上における場合に比し遙かに劣る。4.この柱頭上での差異は花柱内によく現われ,自家は花粉管の数及び伸長速度において劣り,他家に遅れて花柱基部に達する。その大部分のものが花柱基部~子房上部で停滞し,この停滞による花粉管の異状現象は他家の6倍以上に達する。ごく少数のものが子房に侵入するがその後の伸長も悪心。受精率は6.8%で,他家のそれの17.4%にすぎずきわめて低い。5.雌蕋各部の組織自家花粉の発芽及び花粉管の伸長を抑圧するが,その程度は子房部が最も強く,子房部位別では胚珠より子房上部のほうが強い。抑圧物質の分布系統は胎座部~子房上部,花柱,柱頭へと大略推定できるが,分布個所は不明である。6.以上の結果より,自家不和合程度の高い現象の機構は,柱頭上の花粉発芽力が弱く,花柱内の伸長速度が遅いことも否定できないが,花柱基部~子房上部での花粉管の著しい停滞が決定的な要因である。7.ホルモン撒布は自家柱頭上の発芽力及び花柱内の花粉管の伸長を促進する効果はきわめて著しい。しかしそれらも子房上部での停帶を超え得ず,子房への侵入及び受精促進の効果は僅かである。8.幼花及び老花授粉,特に後者の場合に,柱頭上の発芽力及び花柱内の花粉管伸長は促進されているが,受精を促し得たのは老花の場合のみでその程度は低い。9.末期授粉による効果は全くみられない。10.以上の結果より,人為的処理は柱頭上の発芽力及び花柱内の花粉管伸長までは促進する効果は著しいが,花柱基部~子房上部の抑圧力に打ち勝つて伸長を促し,停滞を打破し得ないために,一部の子房への侵入を促進し,受精時期を早め得ることは有り得ても,受精促進の効果は期待できない。
著者
池田 重美 中川 致之 岩浅 潔
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.37, pp.69-78, 1972-06-20 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6
被引用文献数
9 5

煎茶の味と成分組成の関係,あるいは,うまい茶の飲み方の基礎資料として茶69に対して180mlの湯量で40,60,80,95℃の温度と,2,4,6,8,10分の時間を組み合わせた条件で浸出した場合,茶成分がどのように溶出するかを調べた。次に茶の粒度を変えた場合の窒素,タンニン溶出度についても同様の実験を試みた。実験結果から1 温度60℃と80℃の間に成分溶出害胎に特に差のあることが判明した。2 窒素,カフェイン,タンニンは上級茶,並級茶ともに共通した傾向が認められたが,高温におけるエピガロカテキンガレート,およびカテキン合計値の溶出割合は上級茶が高かった。3 各種の成分中,全アミノ酸は上級茶,並級茶ともに溶出割合は高かった。4 粒度については窒素,タンニンともに細かいほど容易に溶出したが,タンニンは細かい粒度を除いて高温では大差がなかった。5 窒素に対するタンニンの比率は全体的には並級茶のほうが大きかったが,両者とも浸出温度の上昇とともに増加し上級茶は60℃と80℃の間に,特に差が認められた。以上の結果から高級茶は低温でゆっくり,下級茶は高温で短時間に茶を入れるのが適当と思われた。なお,本研究は著者の1人池田が,農林省茶業試験場に国内留学中に行なったものであり,実施にあたって種々の御指導,御協力をいただいた同場,久保田技官およびその他の方々に深く感謝します。
著者
竹尾 忠一 田代 正樹 今村 義成
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.60, pp.43-45, 1984-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5
被引用文献数
1

半発酵茶の製造にさいして,その第1操作である萎凋に当たっては,茶葉を35~40℃程度に加温しつつ1時間萎凋したのち,5~6時間室温萎凋し,この間軽く茶葉を撹梓することが,半発酵茶の香味形成上重要である。また,加温萎凋の時間の長短は,茶の香味を変化させることとなり,この調節により香味を異にする茶が造られる。半発酵茶加工に適した茶品種として,べにふじ,ただにしき,いずみ,青心大方があげられ,いずれからも芳香性と品種特有の香りを持つ半発酵茶が造られた。
著者
原田 重雄 渡辺 明 三ツ井 稔
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1961, no.17, pp.1-7, 1961-06-20 (Released:2010-02-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

“Benifuji ” was developed by the-Breeding Laboratory of the Tea Division, Tokai-Kinki Agricultural Experiment Station, and the registration of this variety was made in 1960.Benifuji was selected from the cross Benihomare x C 19. The superior characters of this variety are good growth both in cuttings and in young age, high yield especially when young, good tolerance to cold, and superior qualities of black tea. It is adapted to the northern distrief of black tea production in Japan because of its tolerance to cold.
著者
下徳 敏雄 市川 浩美 阿南 豊正 高柳 博次 池ケ谷 賢次郎
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.55, pp.43-50, 1982-06-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
18
被引用文献数
16 9

(1)当場職員および金谷町の一般消費者合計66名を対象として,日常お茶を入れる時の条件を調査し,うすい入れ方と濃い入れ方を設定した。(2)上記条件と標準浸出法について,玉露,煎茶(上),煎茶(中),煎茶(下),番茶,かまいり茶,ほうじ茶の7種類の茶を用い,可溶分,全窒素,アミノ酸,タンニン,カフェイン,遊離還元糖,ビタミンC,P,K,Ca,Mgの溶出量を調べた。13)その結果,溶出割合では,濃い入れ方と標準浸出法が比較的似ており,うすい入れ方とは,かなり差があった。成分別の溶出割合の比較では,アミノ酸やビタミンCが比較的大きかったのに対し,タンニンやCaは小さかった。一定湯量中の主な成分量について3条件の結果を比較してみると,玉露を除いて各成分ともうすい入れ方,標準浸出法,濃い入れ方の順になっていた。おわりに,本実鯵を遂行するにあたり,多大なる御指導を頂いた茶業試験場製茶部長坂本裕博士に深く感謝の意を表わしますとともに,茶業試験場職員の方々はじめ調査に御協力頂ぎました皆様に厚く御礼申し上げます。
著者
久保田 悦郎 堀田 博 原 利男
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.69, pp.35-41, 1989-06-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

中国産ウーロン茶と,わが国で試作したウーロン茶の香気成分を分析し,次の結果を得た。(1) 中国産ウーロン茶は日本産のものより,ネロリドール,ロンギフォレン,ファルネッセン,トリエンー3―オール,シスージャスモン,ジャスミンラクトン,ベンジルシアニド,インドールなどが多く含まれていた。これに対し,日本産ウーロン茶にはトランスー2―ヘキセナール,シスー3―ヘキセンー1オール,ベンジルアルコールなどが多く含まれていた。この結果は,中国産ウーロン茶に特有の花のような香りが強く,日本産ウーロン茶は青臭いにおいが強いという官能検査の結果とよく一致していた。(2) 中国産ウーロン茶に多く含まれるセスキテルペンとして,茶から初めてロンギフォレンを同定した。(3) 日本産ウーロン茶と中国産のものの香気形成の差異を明らかにするため,ウーロン茶に多く含まれるネロリドールと,紅茶に多く含まれるリナロールおよびシスー3―ヘキセン―1オールの含量比を調べた。その結果,日本産ウーロン茶は,中国産ウーロン茶と紅茶の中間型の香気形成を示した。この研究を行うにあたり,標品のロンギフォレンを分与していただき,同定についてご教示を賜ったお茶の水女子大学教授小林彰夫博士に厚くお礼申し上げます。また,供試材料のウーロン茶を提供していただいた,三井農林株式会社三浦宣安氏,静岡県茶業試験場高橋宇生氏,三重県茶業センター木下 〓氏に深く感謝いたします。
著者
鳥屋尾 忠之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1970, no.32, pp.10-13, 1970-01-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
10

紅茶用品種はつもみじとはつもみじの次代との戻し交雑を行ない,クロロホルムテストによって発酵性を調べたところ,四つの組合せで,3:1の分離比で,正常個体と不発酵個体が出現することが確かめられた。この不発酵性が,1個の遺伝子nfで支配されているとすれば,はつもみじはこの遺伝子のヘテロ個体で,その遺伝子型はnf/+であり,不発酵個体はホモ型で,nf/nfの遺伝子型となる。このことから,供試した親品種の範囲の発酵性は,1座位の複対立遺伝子で支配され,nf遣伝子はこれの一突然変異であると推定される。不発酵個体は,クロロホルムテストで全く赤変せず,黄緑色のままであり,ポリフェノールオキシダーゼ活性は,ほぼ完全に失われており,これは発酵性に関する遺伝的閉鎖と思われる。このような,不発酵個体は,いわゆる弱発酵個体とは,明らかに区別ができる。また,不発酵個体は枕崎支場の多数の保存系統の中からは発見されていない。不発酵個体と正常個体の間には,樹勢ではっきりした差異があり,不発酵個体が劣ることが確かめられた。
著者
上野 健二 杉山 春喜智 河合 昭
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1959, no.13, pp.62-68, 1959-04-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

1.1958年一・二・三番茶期こおいて,たまみどりならびに在来種のはさみ摘の生葉を用いて,ヨンコン茶の製造試験を行つた。2.静岡県でつくられたヨンコン茶製造法を基準として,3種類の方法を比較したが,この中では従来の黒グリ製造法とほぼ同様の方法が,最も適当であることがわかつた。3.ヨンコン茶は形状がやや伸型で,香味のよいのを特徴とするにもかかわらず,はさみ摘の普通原料の場合は,再乾機の投入量を減少したり,中揉機を用いたりしてみてもいずれも効果がなかつた.4,したがつてヨンコン茶の製造においても,ある程度投入量を多くして,再乾仕上をすることが不可欠の要件と思われる。5.しかし投入量の増加は必然的に品質の低下を伴うから,香味を害しない程度の投入量の限界について試験を進める必要がある。